私は耳を疑った。
「え?月20万ですか?」
「そうよ。だって長男夫婦は子供が3人もいて大変だから。あなたたちが負担するのが当然でしょ」
義母は当然のように言う。
「お義母さん、年金はあるんですよね?」
「あるけど、月12万くらいよ。それじゃ足りないでしょ。だからあなたたちが月20万出してくれれば、合わせて32万。それなら安心して暮らせるわ」
私は呆れた。義母は今64歳。まだ元気だし、働こうと思えば働ける。
「お義母さん、貯金は?」
「ほとんどないわ」
「なぜですか?」
「だって、旅行とか美容とか、色々使ってたら貯まらなかったのよ。でも大丈夫。あなたたちがいるから」
完全にATM扱いだ。
私は冷静に言った。
「お義母さん、お断りします」
「え?何で?」
義母が驚いた顔をする。
「子供もいないくせに、何にお金使うのよ?私に出すのが当然でしょ」
その言葉に、私の中で何かが切れた。
「子供がいないのは、私たちの選択です。そのお金をお義母さんに使う義務はありません」
「冷たい!息子の母親なのに!」
「冷たくありません。お義母さんが勝手すぎるんです」
そこへ夫が帰ってきた。義母がすぐに夫に泣きついた。
「あのね、お母さん老後が心配なの。だからあなたたちに月20万出してほしいって言ったら、お嫁さんが断るのよ」
夫は驚いた顔で私を見た。私は状況を説明した。
夫が義母に言った。
「母さん、月20万なんて無理だよ。そんな大金出せるわけない」
「でもあなたたちは子供がいないじゃない」
「それと母さんの老後資金は別問題だろ。母さん、自分で何とかして」
「冷たい!こんな息子に育てた覚えはないわ!」
義母は泣き出した。
でも夫は冷静だった。
「母さん、貯金がないのは母さんの責任だよ。俺たちに頼らないで」
義母は夫にも断られ、次のターゲットを探し始めた。
数日後、義兄から夫に電話があった。
「母さんから、お前たちが月20万出すって聞いたんだけど」
「出さないよ。断った」
「そうか…実は母さん、うちにも頼んできたんだ。でも無理だって断ったら、『次男夫婦は子供いないから出せる』って言ってた」
「俺たちも断ったよ。母さん、どうするつもりなんだろうな」
義兄夫婦も断ったことで、義母の計画は完全に崩れた。
1週間後、義母から連絡があった。
「あの…やっぱり月10万でいいから」
「出しません」
私ははっきり言った。
「5万でもいいから」
「出しません。お義母さん、働いてください」
「働く?私が?」
「はい。まだ64歳でお元気でしょ。パートくらいできますよ」
義母は絶句していた。
それから数ヶ月、義母は生活レベルを下げざるを得なくなった。
旅行も美容院も我慢。食費も節約。
そしてついに、義母はスーパーでパートを始めた。
週4日、1日5時間。月6万円くらいの収入。
年金12万と合わせて、月18万円で生活することに。
ある日、義実家を訪れると、義母が疲れた顔でソファに座っていた。
「お疲れ様です、お義母さん」
私が言うと、義母は小さく頷いた。
「あのね…働くって大変なのね。今まで知らなかったわ」
「そうですよ。だから私たちも簡単にお金を出せないんです」
「ごめんなさい。あなたたちをATM扱いしてたわ」
義母は初めて謝った。
「最初から自分で働けば良かったんですよ」
私が言うと、義母は苦笑いした。
「本当にそうね。貯金もしておけば良かったわ」
それから義母は、パートを続けながら質素に暮らしている。
もう私たちに金銭的な要求はしてこない。
自分で働く大変さを知ったからだろう。
私たち夫婦は、子供がいない分、自分たちの将来のために貯金している。
老後は自分たちで何とかするつもりだ。
義母のように、子供に頼ろうとは思わない。
義母の要求を断って良かった。
あの時譲っていたら、一生ATM扱いされていただろう。
因果応報。
人に頼ろうとした代償は、自分で働く苦労だった。


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