私は、その言葉を信じた。
愛されてる証拠なんだ、と。
「わかった」
「よし、いい子だ」
圭介が、満足そうに笑った。
それから、私の生活は激変した。
職場で男性と話すたびに、LINEで報告する。
「今日、田中さんと会議で話しました。内容は来月の企画について」
「今日、佐藤さんとエレベーターで乗り合わせました。天気の話をしました」
毎日、細かく報告しなければならない。
圭介は、必ず返信してきた。
「田中って何歳?既婚?」
「佐藤って顔は?お前のこと好きそうじゃない?」
疑いばかりの返信。
私は、だんだん職場で男性と話すのが怖くなっていった。
会議でも、必要最低限しか話さない。
「奈緒さん、最近どうしたの?元気なさそう」
同僚の女性が、心配してくれた。
「ちょっと…疲れてて」
「旦那さんと何かあった?」
「そんなことないです」
私は、笑ってごまかした。
2週間後、私は限界を感じていた。
ある夜、圭介が帰ってきた。
「今日の報告、遅かったじゃないか」
「ごめん、残業で…」
「残業中に男と話したんじゃないの?」
「仕事の話しかしてないわよ」
圭介が、私のスマホを要求した。
「見せて」
「え?」
「怪しいなら見せられるだろ」
私は、スマホを渡した。
圭介が、LINEの履歴を全部チェックした。
「これ、田中って誰?」
「職場の人よ。報告したじゃない」
「なんかフレンドリーじゃないか」
「仕事の連絡だから」
圭介が、スマホを返した。
「もっとちゃんと報告して」
私は、深呼吸をした。
そして、静かに言った。
「わかった。でも、一つ条件がある」
「条件?」
「私もあなたに同じことをする」
圭介が、目を細めた。
「同じことって?」
「女性と話したら、全部報告して」
「内容も、相手の名前も、全部」
圭介が、鼻で笑った。
「俺は男だから違うだろ」
「どうして?」
「男と女は違う」
「同じでしょ」
私は、冷静に言った。
「あなたが私を信頼できないなら、私もあなたを信頼できない」
「対等よ」
圭介が、黙り込んだ。
「嫌なら、私への監視もやめて」
「…わかったよ」
圭介が、渋々頷いた。
翌日から、私は圭介を監視し始めた。
「今日、職場で女性と話した?」
「ちょっと話したけど」
「名前と内容、LINEで送って」
圭介が、面倒くさそうに送ってきた。
「山本さんという後輩と仕事の話」
「山本さんって何歳?彼氏いる?」
「知らないよ、そんなこと」
「じゃあ確認して報告して」
「え?」
「私が毎日やってることよ」
圭介が、黙った。
翌日も、私は聞いた。
「今日は?」
「営業の鈴木さんと電話した」
「内容は?」
「仕事の話だよ!」
「ちゃんと報告して。それがルールでしょ」
圭介が、苛立った声で言った。
「お前、嫌がらせしてるの?」
「していないわよ」
「あなたが決めたルールよ」
圭介が、舌打ちをした。
それから1週間、私は毎日圭介に報告を求めた。
圭介は、だんだん不機嫌になっていった。
「こんなの意味ないだろ」
「私もそう思ってた」
「お前のとは違う」
「どう違うの?」
圭介が、答えられなかった。
10日後の夜、私は圭介のスマホが鳴るのに気づいた。
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