圭介がシャワーを浴びている間、テーブルの上でスマホが光っていた。
見るつもりはなかった。
でも、画面に表示された名前が目に入った。
「美咲♡」
私は、震える手でスマホを手に取った。
LINEを開くと、そこには大量のメッセージがあった。
「昨日楽しかった♡」
「また会いたいな」
「奥さんにバレないようにね笑」
私は、全てのメッセージを読んだ。
2ヶ月前から続いていた。
つまり、結婚前から。
私への監視を始めた時期と、ほぼ同じだった。
シャワーが止まった。
圭介が、浴室から出てきた。
タオルで髪を拭きながら、私を見た。
「あれ、何してんの?」
私は、スマホを差し出した。
圭介の顔が、青ざめた。
「それは…」
「報告して」
「え?」
「美咲さんという女性と会っていたんでしょ」
「内容も、全部報告して」
「それは…違う。これは…」
「違わないわよ」
私は、冷静に言った。
「これが、あなたの決めたルールよ」
圭介が、必死に言った。
「待ってくれ。これは説明できる」
「説明しなくていい」
「わかった、全部話す。ただの友達で…」
「友達に『奥さんにバレないように』って言うの?」
圭介が、口を閉じた。
「浮気よね」
「ち、違う…」
「証拠があるわよ」
私は、スマホのスクリーンショットを自分のスマホに送っておいた。
圭介が、崩れ落ちた。
「ごめん…本当にごめん…」
「謝って済む話じゃないわ」
私は、立ち上がった。
「あなたは私を監視した」
「男性と話すたびに報告させた」
「でも、自分は浮気していた」
「どれだけ都合がいいの?」
圭介が、泣き始めた。
「もう一度チャンスをくれ…変わるから…」
「遅いわ」
「離婚します」
「待ってくれ!」
「弁護士に連絡済みよ」
私は、荷物をまとめていた鞄を持った。
実は、スマホを見た瞬間に、弁護士の友人にLINEを送っておいた。
「証拠もある。慰謝料、きっちり請求するから」
圭介が、床に手をついた。
「頼む…」
「あなたが作ったルールよ」
私は、そう言い残して家を出た。
3ヶ月後、離婚が成立した。
慰謝料は、300万円。
圭介は、最後まで未練がましく連絡してきたが、全て無視した。
今、私は職場で普通に話せるようになった。
田中さんとも、佐藤さんとも。
ただの同僚として、普通に。
それが、こんなに気持ちいいなんて。
「奈緒さん、最近明るくなったね」
同僚が、言ってくれた。
「そうかな」
「うん、なんか自由そう」
「自由よ」
私は、笑った。
窓の外を見ると、青空が広がっていた。
本当の自由って、こんなに気持ちいいんだ。
【完】


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