美樹と私は、震える手で裏庭に向かった。長年放置されていた井戸は、雑草に覆われていた。二人がかりで蓋を開けると、中から古びた金属製の箱が見つかった。
箱の中には、黄ばんだノートと一緒に、血のついたスカーフが入っていた。恐る恐るノートを開くと、そこには妻の告白が綴られていた。
「1985年、私は町内会長夫人と不倫関係にあった。彼女は私との関係を公にしようとしていた。パニックになった私は、彼女を説得しようと井戸の近くで会った。しかし、口論になり、彼女は足を滑らせて井戸に落ちてしまった。」
私の頭は真っ白になった。妻が…殺人を犯していたなんて。
ノートの最後のページには、こう書かれていた。
「あなたを欺いてきて本当にごめんなさい。でも、私たちの愛は真実でした。この秘密を抱えたまま生きることはもうできません。私の命をもって、全てを償います。」
その時、警察のサイレンが聞こえてきた。美樹が私の顔を見つめている。「お父さん…私、警察に通報しました。」
私は呆然と立ち尽くした。40年間の結婚生活。それは全て嘘だったのか。それとも…。
妻の最後の言葉が頭の中で響く。「私たちの愛は真実でした。」
警官たちが裏庭に入ってくる。私は深く息を吐き出し、覚悟を決めた。
妻の秘密を守るべきか、真実を明かすべきか。
この選択が、残された私の人生を決定づけることになるのだろう。
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