父の口から意外な真実が明かされる。
「その男は…かつて私たち夫婦の親友だった。」
父は震える手で額の汗を拭った。
「30年前、私たちは同じ会社で働いていた。彼は優秀で、母さんとも仲が良かった。ある日、会社の金に手を付けた疑いが彼にかけられた。」
私は息を呑んだ。
「でも、それは冤罪だった。真犯人は別にいたんだ。母さんはそれを知っていた。」
「なぜ誰も真実を明かさなかったの?」私は問いただした。
父は深いため息をついた。「真犯人は…会社の社長の息子だった。もみ消されたんだ。」
その時、玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けると、そこには見知らぬ中年の男性が立っていた。彼の目は、かすかに母の面影を感じさせた。
「初めまして。私は田中と申します。あなたのお母様とは…」
彼の言葉に、家族の歴史が塗り替えられようとしていた。
母の香水の香りが、再び部屋に漂う。 それは、長年隠されてきた真実の扉を開く鍵のようだった。
【第3話】
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