「誰の稼ぎで生活できてると思ってる?」
夫の康介がそう言った時、私は手を止めた。
「え?」
「だからさ、誰が稼いでると思ってんだよ」
私は28歳の専業主婦。康介は31歳、広告代理店の営業マン。
結婚して2年。
最近、康介の言葉がきつくなってきた。
「俺が毎日働いてるから、お前は家でのんびりできてるんだろ」
「のんびりって…家事やってるけど」
「家事?それだけ?一日中スマホ触ってるじゃん」
康介はテレビを見ながら言った。
「スマホは…」
「インスタに夢中になってないで、ちゃんと家事やれよ」
私は何も言えなかった。
確かに、私はスマホをよく触っている。
でもそれは遊びじゃない。
仕事だ。
私はInstagram、YouTube、TikTokで活動するインフルエンサー。
フォロワーは合計100万人超。
でも康介にはそのことを詳しく話していなかった。
「趣味でSNSやってる」とだけ伝えていた。
本当のアカウントは教えていない。
顔出ししてない別の小さなアカウントだけを見せていた。
数日後、康介の友人たちと食事をした。
「専業主婦っていいよな。毎日家でゆっくりできて」
友人の一人がそう言った。
「まあな。うちの嫁、一日中スマホ触ってるけどな」
康介が笑いながら言った。
「え、何してんの?」
「インスタとかTikTok。いい年して『インフルエンサー』とか痛いんだよな」
友人たちが笑った。
私は黙って聞いていた。
「フォロワー何人?」
「知らねえけど、数百人とかじゃね?趣味でやってるだけだし」
私のメインアカウントのフォロワーは100万人。
でも康介は知らない。
その夜、康介が言った。
「お前さ、インスタやるのやめたら?」
「なんで?」
「恥ずかしいんだよ。友達に『嫁がインフルエンサーごっこしてる』とか思われたくない」
「ごっこ…」
「そうだろ?大して稼げるわけでもないし、時間の無駄じゃん」
私は何も言わなかった。
翌週、康介の会社で会議があった。
康介が帰宅して、珍しく興奮していた。
「すごい案件が来たんだよ」
「何?」
「有名インフルエンサーとのタイアップ。フォロワー100万人超の人」
「へえ」
「その人に商品PR頼むんだ。案件料500万円だって」
私は心臓が早鐘を打った。
「誰なの?」
「まだ会ってないけど、明日打ち合わせ。楽しみだな」
翌日の夜、康介は真っ青な顔で帰ってきた。
【続きは次のページで】


コメント