妊娠8ヶ月、性別が男の子と分かった瞬間だった。
義母が突然宣言した。
「孫の名前、決めたわよ。『太郎』にしましょう」
「いや、私たちで決めますよ?」
「何言ってるの?跡取りなんだから、私が決めるのよ」
義母は本気だった。翌週、立派な命名書を作成して持ってきた。墨で書かれた「太郎」の文字。
「もう親戚中に報告したわよ。『孫の太郎が生まれる』って」
「勝手に報告しないでください!」
「何が勝手なの?当然のことでしょ」
さらに一週間後、義母は出生届の用紙を持ってきた。既に「太郎」と記入済み。
「これにサインして出すだけよ。簡単でしょ?」
「私たちで名前を決めたいんです」
「もう決まってるの。太郎。いい名前でしょ?夫の祖父の名前なのよ」
夫に助けを求めたが、夫は義母の味方だった。
「母さんの決めた名前でいいだろ。太郎、悪くないじゃん」
「私たちの子供なのに、私たちで名前を決められないの?」
「母さんが決めてくれたんだから、感謝しろよ」
私は絶望した。でも、絶対に譲れなかった。
「私たちで決めます」
義母は不機嫌な顔で帰っていった。
出産と義母の暴走
出産当日、無事に男の子が生まれた。
私たち夫婦は、名前を「蒼空(そら)」と決めた。空のように広い心を持った子に育ってほしいという願いを込めた。
しかし出産から2日後、義母が病院に現れた。
この後、義母のまさかの暴走に私は絶望した…
【続き】
義母の突然の訪問
「おはよう〜!太郎ちゃん、会いに来たわよ〜!」
病室のドアが勢いよく開いた。 義母が、大きな花束と紙袋を抱えて入ってきた。
「お義母さん、面会時間は…」 「いいのよ、孫の顔を見に来たんだから!」
義母は私を無視して、ベビーコットに直行した。
「まあ!可愛い〜!太郎ちゃん、おばあちゃんよ〜」 「…お義母さん、名前は『蒼空』に決めましたから」 「何言ってるの?太郎でしょ?」
義母はスマホを取り出した。
「ちょっと写真撮らせてね〜。太郎ちゃん〜」
パシャパシャと連写する音。
「お義母さん、写真は…」 「いいじゃない、おばあちゃんなんだから!」
そして義母は、私にもスマホを向けた。
「はい、ママも一緒に〜」 「やめてください!」
でも、シャッター音は止まらなかった。
SNS投稿の悪夢
義母が帰ってから30分後。 私のスマホに、友人からLINEが届いた。
「ねえ、これ見た?大丈夫?」
添付されていたのは、スクリーンショット。 義母のFacebookの投稿だった。
【義母のFacebook投稿】
『待望の孫、太郎が誕生しました!』
「2025年10月25日、午前3時12分、○○総合病院にて、3,200gの元気な男の子が誕生しました!名前は『太郎』。主人の祖父から取った、伝統ある名前です。
お嫁さんは『自分たちで名前を決めたい』とか文句を言っていますが(笑)、跡取りの名前は私が決めるのが当然ですよね!
これから太郎をしっかり育てていきます! みなさん、よろしくお願いします♡
#初孫 #男の子 #太郎 #おばあちゃんデビュー #跡取り誕生」
私は凍りついた。
病院名。出産日時。体重。 そして私と赤ちゃんの顔写真。
全て、無断で公開されていた。
さらに最悪なのは、コメント欄だった。
【コメント欄】
義母の友人A:「おめでとうございます!太郎くん可愛い〜」 義母→A:「ありがとう!でもお嫁さんがね…」
義母の友人B:「お嫁さん、文句言ってるんですか?」 義母→B:「そうなのよ!『蒼空(そら)』とかいう変な名前にしたいらしいの。キラキラネームよね(笑)」
義母の友人C:「跡取りの名前は義母が決めるべきですよ!」 義母→C:「でしょ?お嫁さん、まだ若いから分かってないのよね〜」
手が震えた。 私は即座に弁護士に連絡した。
制裁開始
弁護士の指示で、義母の投稿を全てスクリーンショット保存。同時に、その内容を「#勝手に孫の名前を決める義母」「#SNS無断投稿」でSNSに拡散した。
反応は凄まじかった。
「これ個人情報保護法違反じゃん」 「病院名まで公開とか頭おかしい」 「弁護士案件だな」 「おばあちゃんだから何しても許されると思ってんの?」
投稿は瞬く間に拡散され、義母のFacebookには批判コメントが殺到。
「すぐ削除してください!」 「お嫁さん可哀想」 「これ犯罪ですよ」
義母の「友人」たちも、義母を批判する側に回った。
友人A:「これは…さすがにまずいですよ」 友人B:「お嫁さんに謝った方がいいと思います」
義母は慌てて私に電話してきた。
「ちょっと!なんでこんなことに!?」 「お義母さんが勝手に公開したからです。今すぐ削除してください」 「で、でも…」 「削除しないなら、弁護士から正式に訴えます」
義母の崩壊
義母のアカウントは通報により削除された。 さらに、義母のパート先にも情報が届いた。
「お客様から『あの炎上してる人』というクレームが来ています。契約を解除させていただきます」
近所でも噂は広まった。 「あの人、お嫁さんの写真を勝手にネットに載せたらしいわよ」 「怖い…うちの子の写真も見せられないわね」
友人からは距離を置かれ、職を失い、近所でも孤立した義母は、遠くの県へ引っ越していった。
最後に義母から来たメッセージは、こうだった。
「ごめんなさい。名前は、あなたたちで決めてください。もう何も言いません」
エピローグ
出生届は無事に「蒼空(そら)」で提出された。
義母は年に一度、「写真は絶対撮らない、SNSにも載せない」という約束のもと、孫に会いに来る。
私たちは、蒼空と共に、平和な日々を過ごしている。 義母の干渉のない、穏やかな日々を。



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