「こんなに料理不味いなら、元カノと結婚したら良かったわ」
夫が作りたての夕食を前に、そう言い放った。
「えっ？本気で言ってるの？？」
「言われたくなかったら、料理教室でも行けよ！」
私は毎日、仕事から帰って1時間かけて夕食を作っている。今日のメニューは鶏肉の照り焼き、ほうれん草のお浸し、味噌汁、ご飯。どこが不味いのか。
「どこが不味いの？」
「元カノの照り焼きはもっと美味かったんだよ。お前のは甘すぎる」
元カノ。5年前に別れた女性の名前を、夫はよく口にする。
「元カノの料理はもっと美味しかった」「元カノならもっとちゃんとやってた」。
私はずっと我慢してきた。でも、もう限界だった。
その夜、私は決意した。元カノに連絡を取ろう。
SNSで元カノを見つけるのは簡単だった。共通の友人を辿れば、すぐに辿り着ける。
私は思い切ってメッセージを送った。
しかしこの後、私はまさかの真実を知ることになる…。
【続き】
「突然すみません。〇〇さん（夫）の妻です。少しお話できませんか？」
翌日、返信が来た。
「あら、奥さん。何かあったんですか？」
私たちはカフェで会うことにした。
元カノは想像していたより気さくな人だった。
「実は、夫があなたの料理を褒めるので…」
すると元カノは笑い出した。
「え、私の料理？あははは！」
「何がおかしいんですか？」
「いや、だって私、料理なんてほとんどしてなかったもん」
「え？」
元カノが説明してくれた。
「最初はね、頑張って作ってたの。でも彼、味音痴でしょ？どんなに丁寧に作っても『普通』って言うの」
「それで？」
「ある日、疲れてて冷凍食品をチンして出したの。そしたら『美味い！これだよ！』って大喜び」
「まさか…」
「それからは全部、冷凍食品とレトルト。餃子もハンバーグもパスタも、全部市販品。それを皿に盛るだけ」
私は絶句した。
「彼、気づかなかったの？」
「全然。むしろ『お前の料理最高！』って毎回言ってた。だから作るのやめたの。バカバカしくて」
「それが…夫の言う『元カノの美味しい料理』…」
「そう。私が別れたのもそれが理由の一つ。味覚音痴すぎて、一緒にいて楽しくなかったのよ」
元カノは私に言った。
「奥さん、あなたはちゃんと料理してるんでしょ？それなのに『不味い』って言われるなんて可哀想。彼、成長してないのね」
私は決めた。夫に真実を突きつけよう。
真実の暴露と完全勝利
翌週、私は夫に言った。
「今日は特別な夕食にするね。あなたの大好きな『元カノの味』を再現してあげる」
「マジで？やっと料理教室行ったのか？」
「まあ、そんなところ」
私はスーパーで大量の冷凍食品とレトルトを購入した。
- 冷凍餃子
- 冷凍ハンバーグ
- レトルトカレー
- 冷凍唐揚げ
- インスタント味噌汁
全て電子レンジでチンして、綺麗な皿に盛り付けた。
夫が帰宅し、食卓を見た。
「おお、なんか豪華じゃん！」
夫は一口食べた瞬間、目を輝かせた。
「これだよ！この味！」
餃子を頬張りながら言う。
「元カノの餃子、まさにこの味だった！どうやって作ったの？」
「企業秘密」
夫はハンバーグも唐揚げも、どんどん食べていく。
「やっと美味い飯が食えた！お前もやればできるじゃん！」
私は静かに立ち上がり、キッチンから全てのパッケージを持ってきた。
冷凍餃子のパッケージ。冷凍ハンバーグの箱。レトルトカレーの袋。全部。
テーブルに並べた。
「これ全部、冷凍食品とレトルトだけど？」
夫の箸が止まった。
「え？」
「元カノの料理って、これだよ。全部冷凍食品」
「嘘だろ…」
「嘘じゃないわ。元カノさん本人に確認したもの」
夫の顔が真っ青になった。
「実は元カノさんと会ってきたの。彼女、あなたの味音痴に呆れて、冷凍食品しか出さなくなったんだって」
「そんな…」
「あなたが褒めてた『元カノの美味しい照り焼き』も『手作り餃子』も、全部スーパーの冷凍食品」
私はパッケージを一つ一つ夫の前に置いた。
「これが『元カノの味』。私が毎日手作りしてる料理より、こっちの方が美味しいんだよね？」
夫は何も言えなくなった。
「私の手料理と冷凍食品、どっちがいい？」
「それは…」
「答えて」
「…ごめん」
夫は土下座した。
「本当にごめん。俺が悪かった。お前の料理、美味しかったよ」
「遅い」
私は離婚届を出した。
「え…」
「味覚音痴と一緒にいられない。それに、私の努力を認めてくれない人とも」
「待ってくれ！」
「元カノさんもね、あなたと別れてから料理が好きになったって言ってたわ。『彼と一緒だと料理する気失せる』って」
夫は何も言えなかった。
「私も同じ。もう作りたくない。あなたのために」
離婚は3ヶ月で成立した。
今、私は一人暮らし。毎日、自分のために丁寧に料理を作っている。
誰にも文句を言われない。誰にも比較されない。
料理が、また楽しくなった。
元カノさんとは今も連絡を取っている。彼女は「スッキリしたでしょ？」と笑ってくれた。
「元カノの味」を、一生食べ続ければいい。
私は間違っていないと思う方は、いいねをお願いします。
コメント