「もし私じゃなくて、他の女性だったら子供欲しい?」
夫は少し考えてから言った。
「うーん、相手によるかな。でもお前となら絶対いらない」
「なんで?」
「お前、子育てとかできなさそうじゃん。それに俺の金使われるのも嫌だし」
私は絶句した。
「じゃあなんで私と結婚したの?」
「お前が好きだったから…ってのもあるけど、正直、結婚しないと周りがうるさかったし」
夫の本音が次々と出てきた。
「子供できないなら、お前も仕事もっと頑張れるだろ?俺の稼ぎだけじゃ足りないし」
「不妊治療に金使うくらいなら、俺の趣味に使いたいわ」
私は静かに立ち上がった。
「わかった。もういい」
「は?何が?」
「離婚する」
夫は笑った。
「また言ってるよ。どうせ口だけだろ」
「本気だよ。弁護士にも相談済み」
夫の顔が変わった。
「は?マジで言ってんの?」
「マジだよ。あなたとはもう無理」
夫は慌てて言い訳を始めた。
「ちょっと待てよ、冗談だったんだって。怒るなよ」
「冗談?私が不妊だとわかった時、『良かった』って言ったのが冗談?」
「あれは…その…」
「もういい。話すことはない。弁護士から連絡行くから」
私は実家に荷物をまとめて帰った。
夫からは毎日LINEが来た。
「ごめん」「戻ってきてくれ」「俺が悪かった」
でも私の心は、もう動かなかった。
離婚調停が始まった。
私は夫の発言を全て記録していた。録音もあった。
「不妊なんだ?良かった」
「お前となら絶対子供いらない」
「子育てとかできなさそう」
弁護士がその録音を調停で流した時、調停委員の顔が険しくなった。
「これは…酷いですね」
夫は「冗談だったんです」と言い訳したが、調停委員は「冗談では済まされない内容です」と言った。
私は慰謝料300万円と財産分与を要求した。夫は「そんな金ない」と拒否したが、最終的に200万円で合意。
離婚成立。
私は自由になった。
それから2年後。
私は不妊治療を再開していた。今度は体外受精に挑戦。そして、奇跡的に妊娠した。
医師は言った。「卵巣機能不全でも、治療とタイミングが合えば妊娠は可能です。諦めなくてよかったですね」
私は涙が止まらなかった。
元夫が「できない」と決めつけていた私に、新しい命が宿った。
私は今、理解のある優しい男性と再婚していた。彼は私の不妊治療を全力でサポートしてくれた。
「一緒に頑張ろう」って、毎回病院に付き添ってくれた。
こんなにも違うものかと、何度も泣いた。
元夫との生活は、何だったんだろう。
妊娠を報告した時、夫(今の)は泣いて喜んでくれた。
「本当によかった。君が諦めなくてよかった」
私は幸せだった。
そして数ヶ月後、共通の友人から元夫の情報を聞いた。
「あいつ、新しい彼女できたらしいよ。で、その彼女が妊娠したって」
「え…」
「でもさ、あいつ『子供なんていらない』って彼女に言ったらしくて、彼女がブチ切れて別れたって。しかも妊娠してるのに」
私は驚いた。
「最低だね…」
「彼女の親が激怒して、慰謝料請求されたらしい。あいつ、お前との離婚でも金払ったのに、また払うことになって破産寸前だって」
因果応報。
元夫は「子供いらない」と言い続けて、誰からも愛されなくなった。
私は、諦めなくてよかった。
元夫が「できない」「いらない」と言った子供が、今私のお腹の中で元気に動いている。
臨月を迎えた今、私は思う。
あの時離婚して、本当によかった。
「不妊なんだ?良かった」
あの言葉を言った男との子供じゃなくて、本当によかった。
私の子供は、愛されて生まれてくる。
心から望まれて、生まれてくる。
そして出産の日。
無事に女の子が生まれた。
夫が「頑張ったね」と言って、私の手を握ってくれた。
娘を抱いた瞬間、私は思った。
この子を産むために、あの時離婚したんだ。
この幸せを掴むために、あの男と別れたんだ。
元夫は今頃、どんな気持ちで暮らしているだろう。
子供を拒否し続けて、孤独な人生を歩んでいる。
私は娘を抱きしめながら、心の中で思った。
ありがとう、あの時「良かった」って言ってくれて。
あなたのおかげで、私は本当の幸せを見つけられたから。
因果応報。
不妊を喜んだ男の末路は、孤独と破産。
子供を諦めなかった私の未来は、愛と希望に満ちている。


コメント