「あなたもお母さんみたいな無能にならないでね」
「え?」
「専業主婦なんて誰でもできるわ。あなたは私みたいにキャリアを築きなさい」
私は怒りが爆発しそうだった。
「母を侮辱しないでください」
「侮辱?事実でしょ?専業主婦なんて社会の役に立ってないわ」
私はその日、母に電話で謝った。
「お義母さんがひどくて…ごめんね」
母は優しく言った。
「大丈夫よ。気にしてないから」
でも、私は許せなかった。
ある日、義母が母を呼び出した。
「娘さん(私)の教育がなってない。あなたの育て方が悪いのよ」
母が「すみません」と謝ると、義母はさらに攻撃した。
「やっぱり専業主婦の母親じゃダメね。社会の厳しさを知らないから、娘もたるんでるのよ」
母は黙って耐えていた。
私はその話を後から聞いて、涙が出た。
「お母さん、なんで黙ってるの?」
「いいのよ。私は気にしてないから」
母はいつも、そう言った。
ある日曜日の夜、テレビで「伝説のピアニスト特集」が放送された。
画面に、若い頃の母が映った。
「若くして国際コンクールで優勝、世界的に活躍した○○さん」
ナレーションが続く。
「ヨーロッパ各地で演奏会を開き、音楽界のレジェンドと呼ばれた彼女は、結婚を機に引退。現在は一般人として静かに暮らしています」
私は画面に釘付けになった。
母が…伝説のピアニスト?
翌日、義母の友人から義母に電話があった。
「昨日のテレビ見た?息子さんの奥さんのお母様、あの有名な○○さんじゃない!?」
義母は慌てて録画を見た。
そして、青ざめた。
義母が慌ててネットで母の名前を検索すると、出るわ出るわ。
「音楽界のレジェンド」「20世紀を代表するピアニスト」「若き天才」
国際的な賞を複数受賞し、世界中で演奏会を開いていた。
一方、義母が自慢していた「大手企業の部長」を調べてみると、社員10人の小さな会社の事務部長だったことが判明。
義母の友人たちが次々と連絡してきた。
「○○さん(母)のサイン、もらえない?」
「すごいお母様ね!」
義母は焦った。
次の親戚の集まり。
親戚が母に声をかけた。
「○○さん、テレビ見ましたよ!すごいですね!まさか世界的なピアニストだったなんて!」
母は謙虚に答えた。
「いえ、昔のことですから」
義母が慌てて言った。
「私、知らなかったんです」
親戚が冷たく言った。
「でも、あれだけ専業主婦を馬鹿にしてたわよね?」
義母の顔が真っ赤になった。
親戚がさらに続ける。
「世間知らずって言ってたけど、世界中で活躍してた人に向かって、よく言えたわね」
義母は何も言えなかった。
義母が母に近づいた。
「あの…有名な方だったんですね。教えてくれればよかったのに」
母が穏やかに、でもはっきりと言った。
「専業主婦は楽でいいわね、とおっしゃいましたよね」
義母が「それは…」と言葉を詰まらせる。
母は微笑んだ。
「私も、楽をさせていただきました」
義母は何も言い返せなかった。
数日後、義母が私に電話してきた。
「あの…お母様に、サインもらえないかしら?友人が欲しがってて」
私は冷たく答えた。
「お義母さん、母を無能と言いましたよね?」
「あれは…誤解で…」
「母は、もうお義母さんとは関わりたくないそうです」
「謝るから!お願い!」
私は母に確認した。
母は静かに言った。
「結構です」
私は義母に伝えた。
「母がそう言ってます」
義母は「そんな…」と絶句した。
親戚の集まりでも、義母は完全に孤立した。
誰も義母の話を聞かず、みんな母の話を聞きたがった。
義母は隅で小さくなっていた。
因果応報。
人を見下した報いは、必ず返ってくる。
母は今も、謙虚に静かに暮らしている。
でも、誰も母を見下すことはなくなった。
義母は今、誰からも相手にされていない。
自業自得だ。



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