「わかってるよ。でも母さんが今住んでるアパート、古くて狭いだろ。息子としてちゃんとした場所に住まわせたいんだ」
「だからって、私のマンションを?」
「お前のマンションじゃなくて、俺たち夫婦のマンションだろ。夫婦は一心同体なんだから」
一心同体?お金は一切出してないくせに。
そもそも、義母と義妹からの金の無心には、もううんざりしていた。
結婚してから、月に1回は義実家に呼び出される。行くと、義母と義妹が待ち構えている。
「お茶入れて」「掃除して」「買い物行ってきて」
完全に家政婦扱い。
それだけならまだ我慢できたが、数ヶ月前から義母が金の無心を始めた。
「ちょっと生活費が苦しくて。15万円貸してくれない?」
15万円?冗談じゃない。
でも義母は泣きながら「義妹の病院代が必要なの」と言うので、仕方なく貸した。
翌月、義妹がブランドバッグを持って義実家に現れた。
「可愛いでしょ?新作なの」
病院代は嘘だったのだ。
それ以降、私は一切お金を貸さなくなった。
すると義母は夫に泣きつく。
「彩香さんが冷たいの。家族なのに助けてくれない」
夫は私に「母さんを助けてやれよ。お前、ボーナス出たんだろ」と言ってくる。
そのボーナスは全てマンション資金に回していた。夫には関係ない。
「健一、お母さんを助けたいなら、あなたが自分のお金で助けて」
私がそう言うと、夫は不機嫌になって黙り込んだ。
そして今、マンションを義母に譲れと言ってくる。
「無理。それは私が買ったマンション。義母さんに譲る理由はない」
私がきっぱり断ると、夫は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「お前、俺の母親をどうするつもりなんだ!息子として母親を大事にするのは当然だろ!」
「だったら健一が自分のお金で家を買ってあげれば?」
「俺にそんな金あるわけないだろ!お前が稼いでるんだから、お前が出すべきだろ!」
呆れて物も言えない。
「とにかく、私は譲らない。これは私の財産」
私が言い切ると、夫は「わかった」と言って部屋を出て行った。
翌日、夫が帰ってきて、ニヤニヤしながら1枚の紙を取り出した。
「これ、何だかわかるよな」
離婚届だった。夫の欄には既にサインがしてある。
「お前がマンションを母さんに譲らないなら、離婚だ。お前も署名しろ」
夫は勝ち誇ったように私を見下ろした。
「どうする?離婚されたくなかったら、マンションを譲るんだな」
これで私が怖がって折れるとでも思ってるのか。
むしろ好都合だ。
「わかった。じゃあ離婚しよう」
私は即座に離婚届にサインした。
「え?」
夫が驚いた顔をしている。
「本当に署名するのか?」
「だってあなたが離婚したいって言ったんでしょ?じゃあね」
私は離婚届を持って、すぐに区役所に提出しに行った。
夫は「ちょ、ちょっと待て!」と慌てていたが、もう遅い。
数日後、マンションの引っ越し日。
私は荷物を全て運び込み、新しい生活をスタートさせようとしていた。
するとインターホンが鳴った。
モニターを見ると、元夫と義母、義妹、そして義父までいる。
「開けろ!これは俺たちの家だ!」
元夫が怒鳴っている。
「どなたですか?」
私が棒読みで聞くと、元夫は激怒した。
「ふざけるな!俺だ!開けろ!」
「ここは私の家です。あなたは元夫ですよね。帰ってください」
「開けないなら壊すぞ!」
元夫がドアの鍵を壊そうとガチャガチャやり始めた。
私はすぐに警察に通報した。
「元夫とその家族が不法侵入しようとしています」
5分後、パトカーが到着。
元夫がドアを蹴っていたところを現行犯逮捕された。
「俺はこの家の主だ!」
元夫が喚いているので、私は警察官に説明した。
「この家の名義は私です。彼は元夫で、既に離婚しています」
警察官が元夫に確認すると、元夫は絶句した。
「お前…本当に離婚届出したのか…」
「あなたが持ってきてくれたじゃないですか。ありがとうございました」
私が笑顔で言うと、元夫は崩れ落ちた。
元夫と義母たちは、器物損壊と不退去罪で警察署に連行された。
後で聞いた話では、彼らは私のマンションに引っ越すつもりで、既に今までのアパートを解約していたらしい。
行き場を失った元夫たちは、結局、格安の古いアパートに4人で住むことになったそうだ。
一方、私は広い新居に両親を呼んで一緒に暮らすことにした。
「本当にいいの?お父さんとお母さんまで」
「いいのいいの。一人じゃ広すぎるし、これも親孝行だから」
両親は喜んでくれた。
離婚してすぐだったので周りには驚かれたが、私は今、とても幸せだ。
あんな人たちのために、自分の夢を犠牲にしなくて本当に良かった。



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