「お母さん…叔父さんが、おばあちゃんの着物を全部捨てたって」
母はすぐに動いた。
「遺言書があるのに勝手に処分するなんて許せない」
母は父に相談した。
父は弁護士だった。
「これは遺産の横領に当たる可能性がある。すぐに調査する」
父は叔父に内容証明郵便を送った。
『遺言に反して遺品を処分したことは違法行為です。着物の返還、または相応の賠償を請求します』
数日後、叔父から電話があった。
「は?賠償?捨てたもんをどうしろって言うんだ?」
父は冷静に答えた。
「では、処分した証拠を提示してください。どこに、いつ、どのように処分したのか」
「そんなもん覚えてねえよ!」
「では調査させていただきます」
父は興信所に依頼して、叔父の行動を調べ始めた。
そして1週間後、衝撃の事実が判明した。
父が調査報告書を広げた。
「ゆい、お前の叔父は着物を捨ててなんかいない」
「え?」
「質屋に入れていた。すでに3着を100万円で質入れしている」
私は愕然とした。
父はさらに続けた。
「それだけじゃない。祖母の貴金属、骨董品、茶道具も勝手に売却していた」
「総額で800万円分の遺産を横領している」
母が震える声で言った。
「お義兄さん…お母さんの遺品を…お金に変えてたの?」
父はすぐに警察に被害届を提出した。
そして、質屋から着物を取り戻す手続きを開始した。
質屋の主人が言った。
「このお嬢さん、お祖母様とそっくりですね。この着物、素晴らしい仕事です。こんな上等なもの、質に入れる人がいるなんて信じられない」
私は涙を堪えながら着物を受け取った。
祖母の温もりが、まだ残っている気がした。
数週間後、叔父は警察に逮捕された。
容疑は遺産の横領。
さらに調査が進むと、叔父には多額の借金があったことが判明した。
ギャンブルで作った借金を、祖母の遺産で返そうとしていたのだ。
法廷で、叔父は小さな声で言った。
「母さん…ごめん…」
判決は、懲役2年執行猶予3年、そして全額賠償。
叔父は800万円を支払うことになった。
私は取り戻した着物を大切に保管し、祖母の作品を展示する小さな記念館を開いた。
地域の人たちが次々と訪れてくれた。
「素晴らしい技術だわ」
「こんな着物、見たことない」
そして、私は祖母から学んだ着物の技術を引き継ぐため、伝統工芸の学校に通い始めた。
私は祖母の遺影に語りかけた。
「おばあちゃん、ちゃんと守れたよ。そして私も、おばあちゃんみたいな着物職人になるから」
遺影の中の祖母が、優しく微笑んでいる気がした。



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