「だって、男性から離婚を切り出すなんて、普通はないもの」
私は黙っていた。
「まあ、息子が選んだのなら仕方ないけど…養育費はもらってるの?」
「いえ」
「まあ、可哀想に。前の旦那さん、ひどい人ね」
帰り道、健人が言った。
「母さん、ちょっと言い過ぎだったよね。ごめん」
「…うん」
「でも、お前が離婚してること、やっぱり母さんは気にするみたい」
「そう」
「まあ、俺が養うから。お前は息子君のこと、ちゃんと育ててくれればいいから」
その言葉に、私は違和感を覚えた。
数日後、健人の友人たちと食事をした。
「健人、子持ちと結婚すんの?マジで?」
友人の一人が驚いた顔で言った。
「まあな」
「お前、優しいな。普通は子持ちとか避けるだろ」
「俺、子供好きだし」
「でも大変だぞ。他人の子供育てるとか」
「まあ、覚悟はしてる」
友人たちは私を見て、同情するような目をした。
「お仕事は?」
「カフェで働いています」
「カフェか。シングルマザーで大変だよね」
「まあ、健人が支えてくれるから」
私はそう答えたが、心の中では複雑な気持ちだった。
その夜、私は息子に聞いた。
「健人さんのこと、好き?」
「うーん、普通」
「そっか」
息子は続けた。
「でも、ママがいつも疲れた顔してる」
「え?」
「健人さんと会った後、ママ、元気ないよ」
子供は敏感だ。
私は気づかされた。
翌日、健人に言った。
「少し、話がしたい」
「どうした?」
「私のこと、本当にどう思ってる?」
「え?好きだよ。だから結婚したいって言ってるじゃん」
「でも、『子持ちと結婚するなんて』『俺が養う』『覚悟してる』って…全部、上から目線じゃない?」
健人は黙った。
「私と息子は、同情の対象なの?」
「違う!そんなつもりじゃ—」
「じゃあ、なんで『母さんに何て説明すればいいの』って言ったの?」
健人は答えられなかった。
「やっぱり、私たちは恥ずかしい存在なのね」
私は立ち上がった。
数日後、息子の学校で授業参観があった。
他の保護者たちと話していると、ある母親が言った。
「あら、○○(大企業名)の会長のお孫さんですよね?」
私は静かに頷いた。
「まあ、やっぱり。噂で聞いてたんですけど」
「息子さん、とても賢いですよね」
「お嬢様なのに、気さくで素敵です」
その会話を、偶然居合わせた健人が聞いていた。
健人は真っ青な顔で私に近づいてきた。
「お、お前…○○の会長の…?」
【続きは次のページで】


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