麻衣が、気まずそうに現れた。
「優奈ちゃん、おめでとう…」
麻衣が、小さな声で言った。
「ありがとうございます」
私は、微笑んだ。
叔母が、嬉しそうに言った。
「優奈ちゃん、新聞見たわよ!すごいわね!」
「テレビも見たわ!立派だったわよ!」
別の親戚も続けた。
「将来が楽しみね!」
みんなが、優奈を囲んで褒めてくれた。
麻衣が、隅で黙っていた。
しばらくして、麻衣が言った。
「美咲も、絵画教室行かせようかしら」
「そうなの?」
「だって、美咲も才能あるかもしれないし」
麻衣が、必死に言った。
でも、美咲は興味なさそうに、スマホでゲームをしていた。
「美咲、絵を描いてみる?」
麻衣が、美咲に聞いた。
「やだ。ゲームがいい」
美咲が、そっけなく答えた。
「ちょっと!せっかくママが言ってるのに!」
麻衣が、イライラし始めた。
叔母が、言った。
「麻衣ちゃん、無理させちゃダメよ」
「子供には、それぞれ向き不向きがあるんだから」
「でも…」
「優奈ちゃんは、絵が好きだから才能が開花したのよ」
「美咲ちゃんは、他に得意なことがあるはずよ」
叔母が、優しく諭した。
麻衣が、黙り込んだ。
別の親戚が、私に言った。
「沙織ちゃん、よく見つけてあげたわね」
「優奈ちゃんの才能」
「ありがとうございます。先生のおかげです」
「謙虚ね。素晴らしいわ」
親戚たちが、私と優奈を褒めてくれた。
麻衣は、その場にいづらそうにしていた。
帰り際、麻衣が小さな声で言った。
「ごめん…」
「え?」
「優奈ちゃんのこと、ひどいこと言って…」
麻衣が、俯いた。
「私、美咲が可愛いからって、調子に乗ってた」
「でも、本当に大切なのは、見た目じゃないのね」
「才能とか、個性とか」
麻衣が、涙目になった。
私は、少し驚いた。
「私も、反省してる」
「美咲にも、ちゃんと向き合わないと」
麻衣が、美咲の手を握った。
私は、頷いた。
「お互い、頑張りましょう」
「うん…」
麻衣が、小さく笑った。
それから、麻衣は変わった。
もう、優奈と美咲を比較しなくなった。
美咲は、ダンスが得意だということがわかり、ダンス教室に通い始めた。
美咲も、楽しそうに踊っている。
親戚の集まりで、麻衣が言った。
「美咲、ダンスの発表会で主役になったの」
「すごいじゃない!」
私が、褒めた。
「優奈ちゃんも、また絵のコンクール出るんでしょ?」
「うん、頑張るって言ってる」
私たちは、笑い合った。
もう、比較ではなく、応援し合える関係になった。
優奈が、私に言った。
「ママ、美咲ちゃんのダンス、すごかったね」
「そうね、美咲ちゃん、頑張ってるものね」
「優奈も頑張る」
優奈が、小さな拳を握った。
私は、優奈を抱きしめた。
子供の才能は、比較するものじゃない。
それぞれの良さを、見つけて伸ばしてあげること。
それが、親の役目なんだと、改めて思った。
窓の外を見ると、夕日が綺麗だった。
優奈の未来も、きっと明るい。
私は、そう信じている。
【完】



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