「お前も来い。ちゃんと愛想よくしろよ」
翔太が、念を押した。
「わかってる」
私は、笑顔で答えた。
同窓会には、翔太の友人が10人ほど集まっていた。
翔太は、友人たちの前でいい夫を演じていた。
「嫁には優しくしてるよ」
「家事も手伝ってるし」
「仲良くやってるよな、麻美」
翔太が、私に同意を求めた。
私は、微笑んだ。
「そうね、翔太は本当に…色々と要求が多いわ」
「要求?」
友人の一人が、聞いた。
「ええ。友達の前では愛想よくしろ、綺麗にしろ、完璧にしろって」
「毎回言われるの」
翔太の顔が、固まった。
「ちょ、ちょっと麻美…」
「あ、それと」
私は、続けた。
「この前の飲み会の後、『愛想悪すぎ』って怒鳴られたわ」
「普通に話してたのに」
友人たちが、翔太を見た。
「翔太、お前…」
「それ、おかしくないか?」
翔太が、冷や汗をかいている。
私は、さらに続けた。
「翔太、家では何もしないのよ」
「家事も育児も全部私」
「でも友達の前では『手伝ってる』って嘘つくの」
「麻美、やめろ…」
翔太が、小声で言った。
「あ、そうそう」
私は、スマホを取り出した。
「翔太が私に送ったLINE、見せてあげる」
画面には、翔太の暴言が並んでいた。
「お前の料理、不味い」
「もっと痩せろ」
「友達に自慢できる嫁になれ」
友人たちが、画面を見て絶句した。
「翔太…これ、お前が送ったのか?」
友人の健一が、信じられないという顔をした。
「それは…その…」
翔太が、言葉に詰まった。
「翔太、お前最低だな」
別の友人が、呆れた顔をした。
「嫁さんを何だと思ってるんだよ」
「アクセサリーじゃねえぞ」
翔太の顔が、真っ赤になった。
「みんな…誤解だよ…」
「誤解じゃないわ」
私は、はっきりと言った。
「私、翔太と離婚するわ」
「は?」
翔太が、驚いた。
「もう限界なの」
「あなたの見栄のために生きるの、疲れた」
友人たちが、私を見た。
「麻美さん、それ本気?」
「本気よ」
私は、頷いた。
「翔太は、私を人間として見てくれなかった」
「いつも友達にどう見られるかばかり気にして」
「私の気持ちは、一度も聞いてくれなかった」
健一が、翔太を睨んだ。
「翔太、お前、本当に最低だな」
「こんないい嫁さんを、見栄のために利用するなんて」
別の友人も言った。
「俺たちの前でいい夫を演じて、裏では暴言吐いてたのか」
「幻滅したわ」
翔太が、私にすがりついてきた。
「待ってくれ麻美!離婚だけは…」
「もう遅いわ」
私は、翔太の手を振りほどいた。
「弁護士にも相談済みよ」
「モラハラで慰謝料請求するわ」
翔太が、青ざめた。
「慰謝料…?」
「ええ、200万円」
友人たちが、ざわついた。
「翔太、自業自得だな」
「こんなことになるなんて…」
翔太が、床に崩れ落ちた。
「すまなかった…本当にすまなかった…」
「謝られても、もう遅いわ」
私は、バッグを持って立ち上がった。
「皆さん、今までありがとうございました」
「麻美さん、頑張ってね」
健一が、励ましてくれた。
「ありがとうございます」
私は、会場を出た。
翔太の泣き声が、後ろから聞こえた。
でも、振り返らなかった。
それから3ヶ月後、離婚は成立した。
慰謝料200万円も、翔太から支払われた。
友人たちは、翔太と距離を置いたらしい。
「お前、最低な夫だったな」
「もう信用できない」
翔太は、友人も失い、孤立したそうだ。
私は、慰謝料で新しいマンションを借りた。
自由な生活が、始まった。
もう、誰かの見栄のために生きる必要はない。
窓の外を見ると、青空が広がっていた。
私の新しい人生が、始まっている。
【完】


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