私たち夫婦は義母の介護を5年間続けてきた。義母は重度の認知症で、24時間目が離せない状態だった。夫には兄が2人いるが、長男は「仕事が忙しい」と言って月に1回も顔を出さない。次男も「うちは子供が小さいから無理」と最初から拒否。結局、私たち夫婦だけが介護を引き受けることになった。
最初は施設も検討したが、義母が「家にいたい」と泣いて頼むので自宅介護を決意。私は仕事を辞め、夫も在宅勤務に切り替えた。オムツ交換、食事介助、夜中の徘徊対応。正直、地獄のような日々だった。
それでも義母は時々正気に戻る瞬間があって、「本当にありがとう。あなたたちには感謝してる。ちゃんと残すから安心して」と何度も言ってくれた。その言葉が私たちの支えだった。
そして今年の春、義母が亡くなった。葬儀が終わり、四十九日も過ぎた頃。長男から夫に電話がかかってきた。
「遺産分割の話なんだけど、お前らには分ける遺産はないから」
夫が「どういうことだ」と聞くと、長男はこう言った。
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