「好きな人ができたから離婚してほしい」
夫が突然そう言い出した。
「えっ？」
結婚20年目。私も夫ももう50歳。
正直、私も最近考えていた。子供も独立したし、そろそろ第二の人生を歩んでもいいんじゃないかって。
だから、ちょうど良かったのかもしれない。
一応、考えるふりはした。「急すぎて…」「どうして…」と戸惑ってみせた。
でも内心は「ラッキー」だった。慰謝料もらって自由になれる。
数日後、私は離婚を承諾した。
「分かった。離婚しよう」
夫はホッとした表情を浮かべた。
「ありがとう。分かってくれて」
私は穏やかに聞いた。
「怒らないから教えて。どんな人と結婚するの？」
夫は少し照れくさそうに言った。
「同じ会社の後輩なんだ」
その夜、夫は酔って饒舌になって色々と話し出した。
そして、今思い返しても色んな意味で身震いするとんでもない話を喋り出したのだ。
夫の壮大な勘違い
「彼女、22歳なんだ。最近入社してきて、俺が上司としてマンツーマンで教えてる」
私は内心で「え？」と思った。
「すごく頑張り屋で、俺のこと尊敬してくれてるんだ」
夫は嬉しそうに続けた。
「休憩時間に俺のデスクに来て、色々話しかけてくれるんだよ。『課長、すごいですね』って」
「ランチも誘われたし、『課長と一緒だと安心します』って言われたんだ」
「この間なんて、『課長みたいな人と結婚したいです』って言われたんだよ」
私は必死で笑いを堪えた。
それ、完全に社交辞令じゃん。
夫は今まで女性に慣れていない。私が初めての彼女で、そのまま結婚した。
だから分からないんだ。22歳の女の子が、50歳のおじさんを恋愛対象として見るわけがないって。
「彼女、絶対俺のこと好きだと思う」
夫は断言した。
私は心の中で思った。（いや、それただの新人が上司に気を使ってるだけだよ…）
でも、私は何も言わなかった。
だって、これで離婚できるんだから。慰謝料ももらえる。夫の勘違いが発覚してから離婚したら、こっちが悪者にされるかもしれない。
私は優しく言った。
「そっか。じゃあ、早めに離婚届出そうね」
夫は嬉しそうに頷いた。
「ありがとう。お前はいい女だよ」
（今更何言ってんの）
勘違いの崩壊と自業自得の地獄
離婚から1ヶ月後。
私は慰謝料500万円を手にして、新しいマンションで快適な一人暮らしを始めていた。
ある日、元夫から鬼のように着信が入った。
50件以上。
メッセージも大量に届いていた。
「電話出ろ」「助けてくれ」「お前のせいだ」
私は無視した。
でも、気になって共通の知人に連絡してみた。
知人から聞いた話は、予想通りだった。
元夫は離婚後、すぐにその後輩に告白したらしい。
「実は離婚したんだ。君と一緒になりたい」
後輩の反応は、
「え…？課長、何言ってるんですか？」
完全拒否。
「私、課長のことそんな風に見たことないです。気持ち悪い」
元夫はショックで激怒したらしい。
「お前、俺を誘ってただろ！勘違いさせるようなこと言いやがって！」
そこから元夫の暴走が始まった。
・後輩のデスクに毎日張り付いて「話がある」と迫る ・「俺のために離婚したのに」と大声で叫ぶ ・ランチに無理やり誘う（ストーカー行為） ・「お前が責任取れ」とメッセージを大量送信
完全にパワハラ、セクハラ。
後輩は人事部に相談。会社は即座に調査を開始した。
元夫の行為は全て記録されていた。メッセージ、メール、社内の防犯カメラ映像。
結果、元夫は懲戒解雇。
さらに、後輩から民事で訴えられることになった。慰謝料請求額は300万円。
知人が言った。
「元旦那さん、完全に自滅したよ。周りからも『気持ち悪い』って総スカンだって」
私は笑った。
「そっか」
元夫からはその後も、泣きながらのメッセージが届いた。
「お前が離婚承諾したから悪いんだ」「お前が止めてくれれば」「助けてくれ」
私は全てブロックした。
離婚から半年後。
私は友人たちとランチを楽しんでいた。
「離婚して正解だったね」
「うん。毎日楽しい」
慰謝料500万円は、新しい趣味や旅行に使っている。
元夫はどうなったか？
・無職 ・後輩への慰謝料300万円支払い命令 ・再就職も難しい（懲戒解雇の履歴） ・実家に出戻り、母親に毎日説教されている
知人から「元旦那さん、後悔してるって」と聞いた。
「20年連れ添った妻を捨てて、22歳の女の子の勘違いで人生終わったって」
私は言った。
「自業自得だね」
50歳の夫が22歳の女の子に本気で恋をして、勘違いで人生を壊す。
滑稽すぎて、笑うしかない。
私は今、自由で幸せだ。
元夫の勘違いに感謝してる。おかげで、慰謝料もらって円満離婚できたから。
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