「次は男の子産んでね。跡継ぎが必要だから」
義母が、私が生んだばかりの娘を抱きながら言った。
私は32歳の会社員。出産を終えて退院したばかり。夫と娘と3人での新生活が始まろうとしていた時だった。
「義母さん、娘が生まれたばかりなのに、もう次の話ですか?」
「だって女の子でしょ?跡継ぎにならないじゃない。早く男の子を産まないと」
私は耳を疑った。
「跡継ぎって…別に特別な家系でもないですよね」
「何言ってるの。長男の家なんだから、跡継ぎは必要よ。嫁の仕事は跡継ぎを産むことなんだから」
私は怒りで震えた。
「私は製造機じゃありません」
「製造機?何言ってるの。とにかく、次は男の子お願いね」
義母は笑いながら去っていった。
その夜、夫に抗議した。
「お義母さんの発言、ひどすぎない?」
「まあまあ、母さんは古い考えだから。気にするなよ」
「気にするなって…私は製造機じゃないんだよ!」
「わかってるよ。でも、まあ、男の子もいたらいいかなとは思うけど」
夫までそんなことを言い出した。
それから数ヶ月、義母からのプレッシャーは続いた。
「二人目はまだ?」「早く男の子産まないと」「女の子だけじゃ可哀想よ」
私が「もう子供は考えてません」と言うと、義母は顔色を変えた。
「は?何言ってるの。跡継ぎはどうするの」
「別に跡継ぎなんて必要ないでしょう」
「必要あるのよ!嫁の仕事は跡継ぎを産むことなの!それができないなら、嫁として失格よ!」
しかし、この後、私の両親がブチ切れる騒動に…
【続き】
「もう無理です。実家に帰ります」
私は娘を連れて、実家に帰った。
夫が慌てて迎えに来たが、私は首を振った。
「お義母さんが謝らない限り、戻りません」
「母さんに謝らせるって…無理だよ」
「じゃあ離婚します」
夫は青ざめたが、私の決意は固かった。
数日後、私の母が義母に電話した。
「あなた、うちの娘に何て言ったんですか」
義母は「跡継ぎのことを言っただけよ。当然のことでしょ」と開き直った。
私の母は激怒した。
「娘は製造機じゃありません!それに、あなたの家って何か特別な家系なんですか?」
「長男の家なのよ。跡継ぎは必要なの」
「ふざけないでください。今時そんなこと言う人がいるなんて」
母は親戚に連絡を取り、次の親戚の集まりで、義母を呼び出した。
私の母は、集まった親戚全員の前で言った。
「この方が、うちの娘に『跡継ぎを産め』『嫁の仕事は跡継ぎを産むこと』と言ったそうです」
親戚全員がざわついた。
「えっ、今時そんなこと言うの?」
「跡継ぎって、別に旧家でもないでしょう?」
「女の子も男の子も同じなのに」
義母は顔を真っ赤にして反論した。
「でも、家のためには跡継ぎが…」
私の叔母が言った。
「跡継ぎって何?財産があるわけでもないのに」
従兄弟も「時代錯誤すぎる」と呆れた顔をした。
さらに、夫側の親戚も参加していて、彼らも義母を批判し始めた。
「いくら義姉さんでも、それはひどいよ」
「孫がいるだけで幸せでしょう。性別なんて関係ない」
「うちの嫁さんにそんなこと言ったら、俺が許さない」
義母は親戚全員から責められ、孤立した。
義父も重い口を開いた。
「妻よ、もういい加減にしろ。時代が違うんだ」
「でも…」
「でもじゃない。お前のせいで、息子夫婦が離婚しかけてるんだぞ。孫にも会えなくなるぞ」
義母の顔が青ざめた。
親戚の一人が「謝りなさいよ」と促した。
義母は渋々立ち上がり、私の前に来た。
「…ごめんなさい」
「何がですか?」
「跡継ぎのことを…言いすぎました」
「それだけですか?」
義母は歯を食いしばった。
「あなたを…製造機みたいに扱って…すみませんでした」
親戚が「もっとちゃんと謝って」と圧力をかけた。
義母は震えながら続けた。
「もう二度と、跡継ぎのことは言いません。娘さんだけで…十分です。本当に申し訳ございませんでした」
義母は深々と頭を下げた。
でも私の心は動かなかった。
「義母さん、私はまだ許せません。しばらく距離を置かせてください」
夫が「妻の言う通りです。母さん、反省してください」と言った。
義母は泣き崩れた。
親戚の集まりが終わった後、親戚たちは私を励ましてくれた。
「あなたは悪くないわよ」
「あんな義母、珍しいわ」
「娘さんを大事に育ててね」
逆に義母は、親戚から冷たい目で見られるようになった。
「あの人、跡継ぎって言ってたんだって」
「時代錯誤よね」
「孫の性別で文句言うなんて」
義母の評判は完全に地に落ちた。
それから数ヶ月、私は実家で過ごした。
夫は毎週娘に会いに来て、「戻ってきてほしい」と頼んだ。
「お義母さんとは会わない条件なら」
「わかった。母さんとは月1回も会わない。約束する」
私は条件を提示した。
「義母からの干渉は一切拒否。次に暴言があれば即離婚。義母との同居は絶対にしない。これが守れるなら戻ります」
夫は全て受け入れた。
私は娘を連れて家に戻ったが、義母とは完全に疎遠になった。
義母が「孫に会いたい」と泣きついても、夫が「まだ早い」と断った。
半年後、義母が再び謝罪に来た。
今度は本気で反省しているようで、涙を流しながら「あなたと娘ちゃんを傷つけてごめんなさい」と言った。
私は少しだけ心を開いて、月に1回だけ会うことを許した。
でも義母の発言で受けた傷は、簡単には消えない。
義母は「跡継ぎ」という言葉で私を傷つけた代償として、孫との時間を大きく失った。
そして親戚からの信頼も失った。
因果応報。
私は娘を抱きしめながら思った。
この子は、性別なんて関係なく、かけがえのない大切な存在なのだと。


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