「ママ嫌い。おばあちゃんがいい」
5歳の娘がそう言ったのは、義母の家から帰ってきた日の夜だった。
私は33歳の会社員。夫と娘の3人暮らし。フルタイムで働いているため、週に2回ほど義母に娘を預けている。
「え?どうして急にそんなこと言うの?」
「だって…ママは悪い人だって、おばあちゃんが言ってた」
私は固まった。
「おばあちゃんが?どういうこと?」
「ママは仕事ばかりで、私のこと嫌いなんだって」
娘は泣きそうな顔で言った。
「そんなことないよ。ママはあなたが大好きだよ」
でも娘は首を横に振った。
「嘘。おばあちゃんが言ってた。ママは私を捨てようとしてるって」
私は震えた。
義母が娘に何を吹き込んでいるのか。
夫に相談すると、「母さんがそんなこと言うわけない」と信じない。
「でも娘がそう言ってるのよ」
「子供の勘違いじゃないか?」
夫は義母を疑おうとしなかった。
次の週、また義母に娘を預けた。
でも今回、私は準備をしていた。
娘のリュックに、小型の録音機を忍ばせたのだ。
その日の夜、娘を迎えに行くと、娘はまた冷たい目で私を見た。
「ママ、早く帰って」
家に帰って、録音を聞いた。
そこには、信じられない会話が記録されていた。
【続き】
義母の声:「ねえ、○○ちゃん。ママは本当はあなたのこと愛してないのよ」
娘:「え?でもママは好きって言ってくれるよ」
義母:「それは嘘。ママは仕事の方が大事なの。あなたは邪魔だと思ってるわ」
娘:「そんな…」
義母:「本当のママは私よ。私だけがあなたを本当に愛してるの。ママはあなたを捨てて、仕事だけしたいと思ってるのよ」
娘:「ママ…私を捨てるの…?」
義母:「そうよ。だからおばあちゃんがあなたを守ってあげないと。ママは悪い人なの」
私は涙が止まらなかった。
怒りと悲しみで体が震えた。
録音はまだ続いていた。
義母:「もしおばあちゃんがいなかったら、あなたはもう死んでたかもしれないわよ」
娘:「死んでた?」
義母:「そう。ママはあなたを産んだ時、育てたくないって言ってたの。でもおばあちゃんが『私が育てる』って言ったから、あなたは生きてるのよ」
全部嘘だった。
私は娘を望んで産んで、全力で愛してきた。
こんな恐ろしい嘘を、5歳の子供に吹き込むなんて。
翌日、私は録音データを持って、夫に聞かせた。
夫は録音を聞いて、顔面蒼白になった。
「これは…母さん…何やってるんだ…」
夫の声が震えていた。
「ごめん。俺が母さんを信じすぎてた。これは…酷すぎる」
「義父さんや親戚の人たちにも聞いてもらいたいの。親族会議を開いてほしい」
「わかった。すぐに手配する」
夫も今回ばかりは本気だった。
週末、義実家に親戚一同を集めた。
義父、義母の妹夫婦、夫の叔父叔母。総勢10人ほどが居間に集まった。
義母は「何の集まり?お祝い事?」と不思議そうにしていた。
「母さん、座って」
夫が静かに言った。
義母は何かを察したのか、表情が強張った。
「皆さんに聞いていただきたいものがあります」
私はテーブルの上にスピーカーを置いた。
「これは、先週義母さんが娘を預かった時の録音です」
再生ボタンを押した。
静かな部屋に、義母の声が響く。
「ママは本当はあなたのこと愛してないのよ」
親戚たちの表情が変わっていく。
「ママは悪い人なの」
義父の顔が真っ赤になった。
「もしおばあちゃんがいなかったら、あなたはもう死んでたかもしれないわよ」
義母の妹が「お姉ちゃん…何これ…」と呟いた。
録音が終わると、部屋は重苦しい沈黙に包まれた。
義母は青い顔で「あ、あれは…」と言葉を探している。
義父が低い声で言った。
「説明しろ」
「あれは…ちょっと言い過ぎただけで…嫁が仕事ばかりだから、孫が可哀想で…」
「ちょっと言い過ぎた?」
義父が立ち上がった。
「5歳の子供に『死んでた』『ママは悪い人』って吹き込むのが、ちょっと言い過ぎたで済むのか!」
義父の怒鳴り声に、義母は縮こまった。
夫の叔母が言った。
「信じられない。こんな酷いこと、孫に言うなんて…」
義母の妹も「お姉ちゃん、おかしいよ。これは虐待だよ」と声を震わせた。
義母は「虐待なんて…私は孫のことを思って…」と弁解しようとした。
「思って?」
私が口を開いた。
「娘は最近、私を『ママ嫌い』って言うようになりました。夜中に『ママが私を捨てる』って泣きながら起きることもあります。これでも『孫のため』ですか?」
義母は何も言えなかった。
夫の叔父が厳しい口調で言った。
「義姉さん、これは完全に一線を越えてる。親子の関係を壊そうとしてるじゃないか」
義父が義母に向かって言った。
「今すぐ孫に謝れ」
「で、でも…」
「謝れ!」
義父の迫力に、義母は震えた。
私は娘を連れてきていた。別室で待たせていたのだ。
娘を抱いて居間に入ると、義母の顔がさらに青ざめた。
「義母さん、娘の前で言ってください。今まで言ったことは全部嘘だったと」
義母は口をパクパクさせている。
「早く言え!」
義父が怒鳴った。
義母は震える声で言った。
「○○ちゃん…おばあちゃんが言ったことは…全部嘘だったの…ごめんなさい…」
でも娘は義母を見ようともせず、私にしがみついていた。
義父が宣言した。
「今日ここにいる親族全員の総意として、お前はもう孫に二度と会うな」
義母は「そんな!」と叫んだ。
「私だって会いたくて…」
「会いたい?」
義母の妹が冷たく言った。
「お姉ちゃんがやったのは、孫への愛情じゃない。支配よ。孫を嫁から奪おうとしてたんでしょ」
親戚全員が頷いた。
夫の叔母が言った。
「私たちも、義姉さんが孫ちゃんに近づくのを見かけたら、止めます」
義父が続けた。
「もし約束を破って孫に接触しようとしたら、俺はお前と離婚する」
義母は崩れ落ちて泣き始めた。
でも、誰も同情しなかった。
私は娘を抱いて、義実家を出た。
夫も一緒についてきた。
「本当にごめん。母さんを甘く見てた」
「もう二度と娘を預けないわ」
「当然だ。俺も、母さんとはしばらく距離を置く」
それから3ヶ月。
娘は少しずつ笑顔を取り戻してきた。
「ママ、大好き」
娘がそう言ってくれた時、私は心から安心した。
義母からは何度も「孫に会いたい」と手紙が来たけど、全て無視している。
義父からは「妻を監視してる。絶対に近づけさせない」と連絡があった。
親族会議での公開処刑。
親戚全員の前で、義母の悪行が暴かれた。
それが一番の制裁だった。
孫を独占しようとして、親族全員から見放された義母。
因果応報とは、まさにこのことだ。



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