突如、職場に現れた義母…
義母「嫁の上司に会わせてください。緊急の用件があります」
義母が私の職場に突然現れたのは、平日の午後2時だった。
私は36歳、大手メーカーで営業課長をしている。夫と結婚して8年、仕事も順調で、部下も10人ほど抱えている。
その日、私は外回りで不在だった。
同僚から電話がかかってきた。
「課長、なんかお義母さん?が会社に来てるんですけど…」
「え?義母が?」
「はい。受付で『嫁の上司に会わせろ』って言ってて、今、部長のところに案内されちゃいました」
私は血の気が引いた。
「今すぐ戻ります!」
急いで会社に戻ると、義母は部長の部屋から出てくるところだった。
「義母さん!何してるんですか!」
すると義母は涼しい顔でとんでもない事を言い出した。
【続き】
「あら、あなたに言っても聞かないから、上司の方に直接お話ししたのよ」
「何を話したんですか」
「あなたが仕事ばかりで家庭を顧みないって。うちの息子が可哀想だから、勤務時間を減らしてほしいってお願いしたのよ」
私は頭が真っ白になった。
「そんなこと…勝手に…」
部長が部屋から出てきた。
「○○さん、ちょっといいかな」
部長室に呼ばれた。
「さっき、お義母さんが来られて…まあ、色々お話しされてたんだけど」
「申し訳ございません。私の家庭の問題で…」
「いや、謝ることはないよ。ただ、お義母さん、かなり心配されてるみたいだね。『嫁が家事をサボって仕事に逃げてる』『夫を放置してる』って」
恥ずかしさと怒りで涙が出そうだった。
「部長、それは全て事実無根です。私は家庭も仕事もきちんとやってます」
「わかってるよ。君の仕事ぶりは評価してるし、家庭の問題は会社が口を出すことじゃない。ただ…」
部長は言いにくそうに続けた。
「お義母さん、人事部にも行かれたんだ」
「人事部にも?」
「うん。『嫁はうつ病で、仕事ができる状態じゃない。休職させるべきだ』って言われたらしい」
私は愕然とした。
「そんな嘘…」
「人事部も困惑してたよ。君がうつ病なんて聞いたことないし、むしろバリバリ働いてるから」
その後、人事部に呼ばれた。
人事部長が深刻な顔で言った。
「○○さん、お義母様から『メンタルヘルスの問題』について報告がありました。事実確認をさせてください」
「私は全く健康です。義母が勝手に言ったことです」
「そうですか。でも、こういう報告があった以上、一応産業医との面談を設定しないといけないんです」
私は屈辱だった。
義母の嘘のせいで、私は「メンタルに問題がある社員」扱いされている。
家に帰って、夫に報告した。
「お義母さんが私の会社に来て、嘘を言いふらしたの」
夫は信じられないという顔をした。
「嘘って…何を」
「私がうつ病だとか、仕事に逃げてるとか。部長や人事部に全部話したらしいわ」
「母さん…何やってるんだよ…」
夫が義母に電話すると、義母は開き直った。
「だってあなた、奥さんに遠慮して何も言えないじゃない。私が言ってあげないと」
「母さん、それは会社への営業妨害だよ。妻の立場がどうなるか分かってる?」
「立場?家庭を大事にしない女の立場なんて知らないわ」
私は決意した。
翌日、私は弁護士事務所に行った。
「義母の行為は、業務妨害と名誉毀損に当たります。民事訴訟が可能です」
弁護士はきっぱりと言った。
「刑事告訴もできますか」
「虚偽の情報を流して業務を妨害したわけですから、業務妨害罪で刑事告訴も可能です。ただし、まずは警告書を送って、義母さんの反応を見ましょう」
弁護士から義母に内容証明郵便が送られた。
「今後、○○様の職場に連絡・訪問すること、及び○○様に関する虚偽情報を流布することを禁じます。違反した場合、法的措置を取ります」
義母から夫に電話がかかってきた。
「何これ!弁護士から手紙が来たわよ!あなたの嫁、私を訴えるつもり!?」
「当然だよ。母さんがやったことは犯罪だから」
「犯罪?私は嫁のためを思って!」
「誰のためにもなってない。母さんの自己満足だよ」
それでも義母は反省しなかった。
数日後、義母はまた会社に電話をかけてきた。
受付の人から連絡があった。
「○○さんのお義母様から『嫁を今すぐ呼び出せ』って電話が…」
「対応しなくて大丈夫です。もし再度電話があったら、警察に通報してください」
そして私は警察に被害届を出した。
「義母が職場に虚偽の情報を流布し、業務を妨害しています」
証拠として、義母が会社を訪問した日の受付記録、部長と人事部長の証言、録音データを提出した。
警察は「業務妨害罪の可能性がある」として、義母に事情聴取を行った。
義母は警察で初めて事の重大さを理解したらしい。
「まさか警察沙汰になるなんて…」
義母は震えながら夫に電話してきた。
「ごめんなさい…私が悪かった…お嫁さんに謝りたい…」
でも、私の心は動かなかった。
会社にも正式に文書を提出した。
「義母の発言は全て虚偽です。私は健康であり、家庭と仕事を両立しています。今後義母が会社に連絡してきても、一切対応しないでください。義母は出入り禁止としてください」
会社は私の要求を受け入れた。義母は会社から正式に「出入り禁止」を通告された。
産業医との面談でも、「全く問題なし」と診断され、私の名誉は回復した。
それから3ヶ月。
義母は何度も謝罪の手紙を送ってきたけど、私は一切返事をしていない。
夫も「母さんとは距離を置く」と決めた。
「妻のキャリアを傷つけようとしたことは、絶対に許せない」
夫はそう言ってくれた。
仕事場に乗り込んで、嘘を言いふらす。
それがどれだけ恐ろしいことか、義母は身をもって知ったはずだ。
私は今も同じ会社で、課長として働いている。
義母の妨害は、私のキャリアを止められなかった。
因果応報。
息子夫婦との関係を壊してまで手に入れたものは、「出入り禁止」の通知だけだった。


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