「職場の佐藤さん、めっちゃ綺麗だよな。お前ももっと痩せろよ」
夫がまた言った。夕食を作っている私に向かって。
私は33歳。夫と結婚して7年。子供はいない。
結婚当初は「可愛い」「綺麗」って言ってくれた夫。でも最近は、他の女性と私を比較してばかり。
「職場の田中さん、スタイルいいよな」「友達の奥さん、若々しいよな」「お前も見習えば?」
毎日のように言われる。
私だって努力してる。家事も仕事もやって、身だしなみにも気を使ってる。
でも夫は満足しない。
「その服、もっと若い感じのにすれば?」「化粧薄くない?」「髪型、古臭い」
私が「そんなこと言われると傷つく」と言うと、夫は「事実だろ。俺は正直に言ってるだけ」。
悪びれる様子もない。
ある日、夫が友人との飲み会から帰ってきた。
酔っていて、スマホをいじりながら笑っている。
「何見てるの?」
「ああ、さっきの飲み会の写真。友達の奥さんたち、みんな綺麗だったわ」
そして画面を見せてくる。確かに皆、綺麗に着飾っている。
「お前も見習えばいいのに」
またか。
数日後、共通の友人から連絡があった。
「ちょっと、旦那さんが飲み会で変なこと言ってたよ」
「何を?」
「『うちの嫁、最近ババアになってさ』って、みんなの前で笑いながら言ってたの。聞いてて不快だった」
言葉が出なかった。
私は、夫の友人たちの前で笑いものにされていた。
その夜、夫に問い詰めた。
「飲み会で私のこと、ババアになったって言ったんだって?」
「ああ、言ったけど。冗談だよ冗談」
「冗談じゃない。傷ついた」
「だって事実じゃん。最近老けたよ、お前」
私は泣いた。
でも夫は「泣くなよ、面倒くさい」って。
その日、私は決めた。
見返してやる。
そして夫はこの後、大後悔する事に…
【続き】
翌日から、私は変わった。
まずジムに入会。週3回、仕事帰りに通い始めた。
食事も見直し、栄養士に相談してバランスの良い食事を摂るようにした。
美容にも投資した。エステ、ヘアサロン、ファッション。自分のために、お金を使った。
夫は「また無駄遣いして」と文句を言ったけど、無視した。
3ヶ月後、体重が5キロ減った。
肌も綺麗になり、髪もツヤツヤ。ファッションも洗練された。
職場の人たちが「最近、綺麗になりましたね」と言ってくれるようになった。
夫は気づいてない。家では相変わらず「お前、まだ痩せないの?」って。
半年後、私は見違えるほど変わった。
体型はスリムに、肌は透明感があり、ファッションセンスも抜群。
職場で男性からのアプローチが増えた。
「ランチ一緒にどうですか?」「今度飲みに行きませんか?」
全部断っていたけど、ある日、同じ部署の山田さんが真剣な顔で言った。
「僕と付き合ってください」
山田さんは35歳、誠実で優しい人。仕事もできて、周りからも信頼されている。
「私、結婚してるんです」
「知ってます。でも…旦那さん、あなたを大切にしてないですよね」
私は驚いた。
「何で知ってるの?」
「会社の飲み会で、旦那さんと会ったことあるんです。あなたのことを馬鹿にしてました。『うちの嫁は』って。聞いてて腹が立った」
「そう…だったんだ」
「あなたは素敵な人です。もっと大切にされるべきだと思います」
山田さんの言葉が、心に沁みた。
私は決めた。
離婚しよう。
その夜、夫に言った。
「離婚したい」
夫はゲームをしながら「は?何言ってんの」。
「真剣に話してる。離婚したい」
「理由は?」
「あなたが私を大切にしないから」
「大切にしてるだろ。家もあるし、生活費も渡してる」
「でも私を馬鹿にしてる。他の女性と比較して、私をババア扱いして、友達の前で笑いものにした」
「だから冗談だって」
「冗談じゃない。もう限界」
夫は初めて真剣な顔になった。
「ちょっと待て。離婚とか急に言われても」
「急じゃない。ずっと考えてた」
「俺が悪かった。これから気をつけるから」
「遅い。もう他に好きな人ができた」
夫の顔が凍りついた。
「は?何それ。お前、浮気してんの?」
「浮気じゃない。あなたと離婚してから付き合う。もう気持ちは決まってる」
「嘘だろ…誰だよ、相手」
「言う必要ない。とにかく離婚したい」
夫は信じられないという顔で私を見た。
「お前が…他の男と?冗談だろ」
「冗談じゃない。その人は私を大切にしてくれる。私を綺麗だって言ってくれる。あなたみたいに他の女と比較したりしない」
夫は慌てた。
「待てって。俺が悪かった。お前、最近綺麗になったよ。気づいてたよ」
「嘘。昨日も『まだ痩せないの?』って言ったよね」
「それは…その…」
「もういい。弁護士に相談してる。離婚届、書いて」
夫は何も言えなくなった。
1ヶ月後、離婚が成立した。
財産分与もきっちりもらった。
そして私は山田さんと正式に交際を始めた。
山田さんは毎日「綺麗だね」「一緒にいると幸せだよ」って言ってくれる。
デートも楽しいし、彼は私の話をちゃんと聞いてくれる。
私は初めて、本当に大切にされていると感じた。
半年後、山田さんとの幸せな写真をSNSにアップした。
元夫とは共通の友人が多いから、絶対に見るだろうと思って。
案の定、元夫から連絡が来た。
「お前、もう新しい男と付き合ってんのかよ」
「はい。幸せです」
「俺のこと、まだ好きだろ?やり直そう」
「無理です。あなたは私をババア扱いして、他の女性と比較して、笑いものにした。そんな人とやり直すつもりはありません」
「俺が悪かった。本当に反省してる」
「反省するなら、私を馬鹿にしてた時にしてください。もう遅いです」
「待ってくれ…」
私はブロックした。
それから1年。
山田さんと結婚した。新しい生活が始まった。
彼は毎日、私を褒めてくれる。家事も分担してくれる。優しくて、思いやりがある。
これが本当の夫婦だと思った。
共通の友人から聞いた話では、元夫は私のSNSを毎日チェックして、「俺が間違ってた」「あいつを手放すんじゃなかった」って後悔してるらしい。
でも、もう遅い。
私を馬鹿にしてた時、もっといい男性が私を見ていた。
そしてその人が、今、私の隣にいる。
元夫へ。
人の容姿を馬鹿にする人は、いつか自分が後悔する。
因果応報。
私はもう、あなたのことなんて忘れた。
幸せすぎて、思い出す暇もないから。


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