翌日から、私は変わった。
仕事終わりに図書館に通い、資格の勉強を始めた。難関と言われる国家資格。合格率は10%以下。
でも、私は本気だった。
夫が家でゲームをしている横で、私は黙々と勉強した。
「何勉強してんの?」
「資格」
「どうせ無理だろ。お前、高卒だし」
「そうかもね」
私は何も言い返さず、勉強を続けた。
毎日3時間。休日は8時間。
夫が「勉強ばっかりして、飯は?」と文句を言っても、「自分で作って」と返した。
「お前、嫁だろ。飯作るのが仕事だろ」
「私も働いてるんですけど」
「でも俺の方が稼いでるし」
「じゃあその分、家事代行でも雇ってください」
夫は不満そうだったけど、私は気にしなかった。
1年後、私は一次試験に合格した。
夫に報告すると「へえ、一次だけね」と興味なさそう。
「まあ二次で落ちるだろうけど」
「そうかもね」
私はさらに勉強を続けた。
そして1年半後。
二次試験も合格。難関国家資格を取得した。
夫に報告すると、「マジで?」と驚いた顔。
「でも資格あっても仕事できるかは別だけどね」
「そうですね」
私は転職活動を始めた。
難関資格持ちは市場価値が高い。複数の企業から内定をもらった。
その中で一番条件の良い会社を選んだ。年収は今の倍。夫の年収を超える。
夫に転職を報告すると「え、そんな勝手に決めて」と不満げ。
「でも年収、あなたより上になります」
「は?」
「年収800万円です。あなたは550万円ですよね」
夫は黙った。
転職後、私の生活は激変した。
仕事は忙しいけど、やりがいがある。周りの人たちは私の意見を尊重してくれる。
家では、私が家計を管理することにした。
「これから私の方が稼ぐので、家計は私が管理します」
「ちょっと待て、それは…」
「嫌なら家計を完全に分けましょう。生活費は折半で」
夫は渋々了承した。
それから半年後。
夫の会社が業績悪化でリストラを始めた。
そして、夫がその対象になった。
「俺、クビになった…」
夫が青ざめた顔で帰ってきた。
「そうなんだ」
「お前、それだけ?」
「他に何を言えば?」
「普通、心配するだろ」
「あなた、私が体調悪い時も『大げさだろ』って言ってましたよね。同じです」
夫は何も言えなかった。
夫は再就職活動を始めたけど、なかなか決まらない。
年齢は35歳。特別なスキルもない。学歴だけが自慢の男。
1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月。
面接は受けるけど、全部落ちる。
夫の貯金が底をつき始めた。
「なあ…お金、貸してくれないか」
「いくら必要ですか?」
「生活費…月20万くらい」
「はい。でも貸すんじゃなくて、立て替えですよ。就職したら返してくださいね」
「わ、わかった」
それから3ヶ月。
夫はまだ仕事が決まらない。
私が立て替えた金額は60万円を超えた。
夫はどんどん追い詰められていった。
ある日、夫がリビングで土下座していた。
「頼む…もう少し援助してくれ」
「高卒の私に頼るんですか?」
「…悪かった。あの時は本当に悪かった」
「何が悪かったんですか?」
「お前を…高卒だって馬鹿にしたこと」
「他には?」
「友達の前でもお前を馬鹿にした。本当にごめん」
夫は泣いていた。
私は冷静に言った。
「わかりました。援助の条件があります」
「何でも言ってくれ」
「離婚してください」
夫の顔が凍りついた。
「り、離婚?」
「はい。私、もうあなたと暮らす意味がないので」
「待ってくれ。俺が悪かった。就職したらちゃんと働くから」
「就職してから言ってください。でも私の答えは変わりませんけど」
「お願いだ。離婚だけは…」
「離婚を条件に、生活費を半年分だけ出します。総額120万円。それで就職活動を続けてください」
夫は震えながら「わかった…」と頷いた。
離婚調停はスムーズに進んだ。
夫には反論する材料もなく、私の条件をほぼ全て飲んだ。
財産分与も、私の方が稼いでいるので、ほとんど私が持っていくことに。
離婚が成立した日、夫が最後に言った。
「俺が間違ってた。お前は本当にすごかった」
「今更ですね」
「やり直せないか?」
「無理です。私を高卒だと馬鹿にした時点で、あなたへの愛は消えました」
夫は何も言えず、荷物をまとめて実家に帰っていった。
それから1年。
私は仕事で昇進し、さらに年収が上がった。
一方、元夫は何とか小さな会社に就職したらしいけど、年収は300万円台だと共通の知人から聞いた。
知人が「元旦那さん、すごく後悔してるって。あんたを手放したことが人生最大の失敗だって言ってたよ」と教えてくれた。
「そうですか」
「復縁は考えないの?」
「ないですね。私はもう前を向いてるので」
実際、私には今、素敵な彼氏がいる。
彼は私の努力を認めてくれて、尊重してくれる。学歴なんて気にしない人。
「君は本当にすごいね。尊敬するよ」
彼が言ってくれる言葉は、元夫が一度も言ってくれなかった言葉。
今、私は幸せだ。
元夫へ。
学歴だけで人を馬鹿にした結果、あなたは全てを失いました。
私は高卒だけど、努力であなたを超えました。
因果応報。
これがあなたが受けるべき結末です。
さようなら。



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