「ああ、あの犬?保健所に連れて行ったわ」
夫がそう言った瞬間、私の世界が止まった。
「え…何…?」
「だから、保健所。犬臭いし、邪魔だったから」
私は29歳の会社員。夫は32歳。結婚して1年。
そして、私には結婚前から一緒に暮らしている愛犬のコロがいた。7歳のゴールデンレトリバー。
父が亡くなった時、「お前が守れ」と言うようにコロを残してくれた。私にとって、コロは家族以上の存在だった。
「嘘…でしょ…?」
「嘘じゃねえよ。お前が仕事行ってる間に連れて行った」
夫は冷蔵庫からビールを取り出して、平然と飲んでいる。
「なんで!?なんで勝手なことするの!?」
「だって臭いんだもん。お前が毎日掃除してても犬臭いし、毛は抜けるし。俺、もう我慢の限界だったんだよ」
私は震える手で携帯を取り出して、保健所に電話した。
「あの、今日、ゴールデンレトリバーが持ち込まれませんでしたか?」
「少々お待ちください…はい、本日午前中に1頭持ち込まれております」
「まだいますか!?返してもらえますか!?」
「飼い主様であれば可能ですが、本日中にお越しいただけますか?明日になると…」
明日になると処分される。
私は電話を握りしめた。
「今すぐ行きます!待っててください!」
電話を切って、夫を睨んだ。
「最低。あなた、最低だよ」
「所詮ペットだろ。そんな大げさな」
「所詮ペット?コロは私の家族なの!お父さんが遺してくれた大切な…」
言葉が続かなくなった。涙が溢れて止まらない。
私は車の鍵を掴んで、家を飛び出した。
【続きは次のページで】



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