「お前の貯金、ちょっと借りたわ。投資で増やしてやるから」
夫がそう言ったのは、結婚して半年後のことだった。
私は31歳の会社員。夫は33歳で同じく会社員。恋愛結婚で、交際中は優しくて真面目な人だと思っていた。
「借りたって…勝手に?」
「いいだろ。夫婦なんだから。株で増やして返すよ」
私が結婚前から貯めていた貯金は500万円。10年かけてコツコツ貯めた大切なお金。将来のマイホーム資金にするつもりだった。
「でも、私に相談なしに…」
「細かいこと言うなよ。俺を信じろって」
夫は株取引を始めて数ヶ月。最初は小遣いの範囲でやっていたはずなのに。
不安を感じながらも、夫を信じることにした。
それから1ヶ月後。
夫が暗い顔で帰ってきた。
「あのさ…ちょっと損が出た」
「どれくらい?」
「…300万」
私は耳を疑った。
「300万!? 500万円が200万円になったってこと!?」
「まあ、そうなるな。でも株は長期保有すれば戻るから大丈夫」
大丈夫なわけがない。私が10年かけて貯めた500万円が、1ヶ月で300万円も減ったのだ。
「返してよ。もう株なんてやめて」
「無理だよ。もう株買っちゃってるし。これから上がるから待てって」
夫は全く反省していなかった。
それから毎日、株価をチェックする夫。でも株価は下がり続けた。
「また下がった…」「なんでだよ…」
私は夫に何度も「売って現金に戻して」と頼んだけど、「今売ったら損が確定する」と聞かない。
そして3ヶ月後。
夫がまた暗い顔で言った。
【続きは次のページで】


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