合鍵で勝手に入ってきた義母は、私のキッチンを、まるで自分の城のように使い始めた。
義母「ちょっとどいて。お鍋、借りるわよ」
私「あ、でも、もう味付けは…」
義母「いいから、いいから。あなたじゃ、あの子は満足しないんだから」
そう言って、私が作りかけたハンバーグのタネに、勝手に調味料を足していく。
味噌、しょうゆ、よくわからない自家製の合わせ調味料。
私のハンバーグは、あっという間に「義母の味」に塗り替えられた。
その夜、帰宅した夫は、何も知らずに食卓についた。
夫「ただいま。お、ハンバーグ! うまそう」
そして、一口食べて——
夫「あ、これ母さんの味だ。久しぶり! 美咲、よく再現できたね」
私は、何も言えなかった。
キッチンの隅で、義母が、勝ち誇ったように微笑んでいたから。
その日から、義母は「合鍵」を使って、ほぼ毎日、家にやってくるようになった。
私が仕事に行っている間に、勝手に上がり込み、冷蔵庫を開け、私の作り置きを捨てる。
そして、自分の手料理を、タッパーにぎっしり詰めて置いていく。
それだけではなかった。ある日帰宅すると、寝室のクローゼットが、きれいに片付けられていた。
私「…これ、お義母さんが?」
夫に確認すると、悪びれもせずこう返ってきたという。
義母「収納が下手なのね。あの子が可哀想だから、整理しといたわ」
私の下着の引き出しまで、勝手に開けられていた。全身に、鳥肌が立った。
冷蔵庫には、毎日、付箋が貼られていた。
「美咲さんへ。あの子の好みは、これが正解です。お母さんより」
正解。私の家の冷蔵庫に、義母の“正解”が、毎日並んでいく。
私の作ったものは「不正解」として、容赦なくゴミ箱へ消えた。
だんだん、私は自分の家にいるのが、怖くなっていった。
仕事が終わっても、まっすぐ帰れない。玄関のドアを開けるたびに、「今日も、いるかもしれない」と身構える。
新婚の、幸せだったはずの我が家が、いつのまにか、いちばん落ち着かない場所になっていた。
そんなある日、私は決定的なものを見つけてしまった。
【続きは次のページで】


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