冷蔵庫の奥に、見慣れないノートが一冊。
開いてみると、そこには——夫の食事の記録が、何年分も、びっしりと書き込まれていた。
「○月○日 ハンバーグ 完食」 「△月△日 肉じゃが 残した→味が薄い?要改善」
ゾッとした。義母は、息子の食事を、結婚後も“管理”し続けるつもりなのだ。
そして、最後のページには、こう書かれていた。
「嫁の料理は、あの子に合わない。私が、ずっと作り続けなければ」
——この人は、私から、夫を“取り返そう”としている。
私は、ようやく事の重大さに気づいた。これは、ただの過干渉じゃない。
その夜、私は勇気を出して、夫に打ち明けた。
私「ねえ。お義母さんが、毎日合鍵で来てるの、知ってた?」
夫「え? 毎日? いや…たまに様子見に来てるくらいかと」
私「冷蔵庫の作り置き、全部捨てられてる。私の料理は“正解じゃない”って」
夫は、絶句した。本当に、何も知らなかったのだ。
私「私ね、この家にいるのに、自分の居場所がないみたいなの」
そう言うと、こらえていた涙が、ぽろぽろこぼれた。
夫は、しばらく黙っていた。そして、静かに言った。
夫「……ごめん。俺、母さんに甘えてた。気づいてなかった」
夫「でも、もう気づいた。これは、ちゃんと俺がケジメをつける」
翌週末。夫は、義母を家に呼んだ。
そして、三人で向き合った。
夫「母さん。合鍵、返してもらえるかな」
義母「え? なんで。私はあなたのために…」
夫「わかってる。母さんが、俺を大事に思ってくれてるのは。でも、ここは俺と美咲の家なんだ」
義母「でも、あなた、私の味じゃないとダメでしょう? 昔からそうだったじゃない」
義母「それに、家のことだって、美咲さんはまだ何にもできないじゃないの。私がいないと、この家、回らないわよ」
その一言に、私の手が、膝の上でぎゅっと握られた。
でも、ここで黙ってはいけない。私は、自分の家のことだから。
夫は、まっすぐ義母の目を見て、言った。
【続きは次のページで】


コメント