私が自宅で倒れた。
過労とストレスで意識を失った。夫は仕事で不在だった。
友人に連絡したかったけど、もう連絡先もわからなかった。夫がスマホを管理していて、友人の連絡先を削除させられていたから。
幸い、隣人の奥さんが物音に気づいて、救急車を呼んでくれた。
病院に運ばれて、一命を取り留めた。
入院中、夫は一度だけ見舞いに来て、「お前が無理するから」と言って帰った。
その後、見舞いに来たのは、隣人の奥さんだった。
「大丈夫?」って優しく声をかけてくれた。
そして3日後、驚いたことに、高校時代の親友、美咲が見舞いに来てくれた。
「隣の奥さんから連絡もらったの。心配で来ちゃった」
美咲の顔を見た瞬間、涙が止まらなくなった。
「ごめん…ごめん…連絡できなくて…」
「いいよ、いいよ。何があったの?」
私は全部話した。夫が友人関係を制限してきたこと、スマホをチェックされること、SNSも禁止されたこと。
美咲は真剣な顔で聞いていた。
「それ、DVだよ」
「え?」
「精神的なDV。あなた、支配されてるんだよ」
私は初めて気づいた。
これは愛情じゃない。支配だった。
美咲は「専門家に相談した方がいい」と言って、DVの相談窓口の連絡先を教えてくれた。
退院後、私は密かに相談窓口に電話した。
カウンセラーは「典型的な監視・束縛型のDVです」と言った。
「友人関係を断たせて、孤立させる。これは精神的虐待です。早く離れた方がいい」
私は決心した。
夫から逃げる。
美咲が協力してくれて、脱出計画を立てた。夫の出張中に荷物をまとめて、実家に帰ることにした。
そして、ある日曜日。
夫が2泊3日の出張に出かけた。
私は急いで荷物をまとめた。美咲が車で迎えに来てくれて、実家まで送ってくれた。
実家の両親は激怒した。
「そんなことされてたのか!すぐに離婚しろ!」
父が怒鳴った。母は泣きながら抱きしめてくれた。
翌日、私は弁護士に相談した。
弁護士は「これは十分に離婚理由になります。証拠はありますか?」
私は夫とのLINEのやり取り、スマホをチェックされている動画(密かに撮っていた)、そして友人たちの証言をまとめていた。
「完璧です。これなら有利に進められます」
離婚調停が始まった。
夫は「愛してたから心配しただけだ」「DVなんてしてない」と主張したけど、証拠の前には何も言えなかった。
調停委員も「これは精神的DVです」と認定した。
さらに、私は接近禁止命令も申請した。夫がストーカー化する可能性があったから。
裁判所は私の訴えを認めてくれた。
夫は「そんな…俺はお前を愛してただけなのに…」と被害者ぶっていたけど、もう聞く耳を持たなかった。
離婚が成立した。
私は自由になった。
久しぶりに美咲とランチに行った。他の友人たちも「おかえり」って言ってくれた。
「ごめん、連絡できなくて」
「いいよ。あなたが無事で良かった」
友人たちは変わらず優しかった。
今、私は一人暮らしをしている。毎日が自由だ。
友人とランチに行っても、誰にも報告しなくていい。SNSに好きな写真を投稿できる。スマホを誰にもチェックされない。
こんな当たり前のことが、こんなに幸せだなんて。
元夫からは時々「やり直せないか」とメッセージが来るけど、全部ブロックしている。
接近禁止命令があるから、元夫は私に近づけない。
先月、美咲が「素敵な人紹介しようか?」って言ってくれた。
「まだいいよ。今は自由を楽しみたい」
「そうだね。焦らなくていいよ」
友人がいるって、こんなに心強いんだ。
元夫が私から奪おうとした「友人」は、私を救ってくれた。
孤立させようとする人は、あなたを愛してない。
支配しているだけ。
本当に愛してくれる人は、あなたの人間関係を尊重してくれる。
私は今、それを理解している。
そして、もう二度と、誰かに支配されることはない。


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