不審な点があった。
外食の記録が、ほとんどない。
コンビニで飲み物を買った記録くらいしかない。
「外で食べてる」と言ってるのに、カードを使ってない?
現金で払ってる?でも、夫の財布にそんなに現金が入ってるはずもない。
私は不安になった。
もしかして…浮気?
ある日、私は夫を尾行することにした。
夫が「今日も外で食ってくる」と言って出た後、私もこっそり車で追いかけた。
夫は駅前のレストラン街には向かわなかった。
向かった先は…義実家だった。
私は車の中で、唖然とした。
外食じゃなくて、義母の家?
夫が義実家の玄関に入っていくのを確認してから、私も車を降りた。
インターホンを押すと、義母が出てきた。
「あら、どうしたの?」
「夫が来てますよね」
「ええ、来てるわよ。夕食を食べに」
義母は当然のように言った。
「夕食…ですか」
「そうよ。毎日来てるわ。息子のために料理作ってるの」
義母は得意げに笑った。
私は玄関に上がり込んだ。
リビングでは、夫がテーブルで食事をしていた。
「あなた…」
夫は驚いて箸を止めた。
義母が続けた。
「嫁の料理より、私の方が美味しいでしょ?息子もそう言ってるのよ」
私は夫を睨んだ。
「これ、どういうこと?」
夫は目を逸らした。
「だって…母さんの料理の方が美味いし」
私の中で何かがプツンと切れた。
「じゃあ、お義母さんと暮らせば?」
「は?」
「離婚します。お義母さんの料理が好きなら、ここに住めばいいじゃないですか」
義母が「ちょっと、大げさよ」と笑ったが、私は本気だった。
「私は毎日料理を作って、捨てて。あなたは『外食』と嘘をついて義母の家に。もう無理です」
夫は「ちょっと待て」と言ったが、私は家を出た。
その夜、私は実家に帰った。
両親に事情を話すと、父が激怒した。
「そんな奴、離婚だ」
数日後、義父から連絡があった。
「嫁さん、話を聞いた。息子と妻が何をやってるのか、全く知らなかった」
義父は怒っていた。
「妻は息子を甘やかしすぎる。嫁さんが作った料理を食べずに、毎日実家に来るなんて異常だ」
「お義父さん…」
「離婚するなら、全面的に協力する」
義父の言葉に、私は救われた。
離婚調停が始まった。
調停委員に事情を説明すると、呆れた顔をされた。
「ご主人は、毎日義母の家で夕食を?」
「はい。私には『外食』と嘘をついて」
「それは…酷いですね」
結局、離婚は成立。慰謝料100万円と財産分与で貯金の7割を獲得した。
離婚後、夫は義母と二人で暮らし始めたらしい。
義父は「息子の異常性に愛想が尽きた」と別居を選んだという。
それから半年後。
共通の知人から、元夫の近況を聞いた。
「お前の元旦那、義母の料理に飽きて、毎日コンビニ弁当食ってるらしいぞ」
「え?」
「義母の料理、毎日同じメニューで飽きたんだって。でも文句言えないから、コンビニで買って部屋で食べてるらしい」
私は笑ってしまった。
「それに、義母が『あんたも料理くらい覚えなさい』ってうるさいらしい」
元夫は義母の料理を選んで、私を捨てた。
でも結局、義母の料理にも飽きて、コンビニ弁当。
しかも義母から毎日小言を言われる日々。
自業自得だ。
「元旦那、『やっぱり元嫁の料理が恋しい』って言ってるらしいよ」
知人が笑いながら言った。
「もう関係ないですけどね」
私は今、新しいマンションで一人暮らしをしている。
毎日、自分のために料理を作る。
誰にも文句を言われず、誰にも捨てられない。
自分が食べたいものを、自分のために作る。
それが、こんなに幸せだとは思わなかった。
先日、義父から連絡があった。
「息子が『元嫁に謝りたい』って言ってるが、連絡先を教えていいか?」
「いえ、結構です」
「そうか…そうだよな」
義父は寂しそうに笑った。
「息子は、本当にバカなことをした。いい嫁さんだったのに」
「お義父さんだけは、優しくしてくれて感謝してます」
電話を切った後、私は自分で作ったハンバーグを食べた。
美味しい。
元夫は、この味を二度と食べることはできない。
義母の料理とコンビニ弁当で、一生を過ごせばいい。
因果応報。
妻の料理を拒否して、義母を選んだ男の末路。
私は今、誰のためでもなく、自分のために料理を作る毎日が幸せだ。



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