「本当のこと?」
「私の本当の仕事を」
父は引き出しから名刺を取り出した。
そこには「株式会社○○ホールディングス 代表取締役会長 山田太郎」と書いてあった。
私は目を疑った。
「え…会長…?」
「ああ。お前が金目当ての男に狙われないように、ずっと隠してきた」
「じゃあ、中小企業の一般社員って…」
「嘘だ。私は30年前に会社を立ち上げて、今では従業員3000人の企業グループの会長だ」
私は言葉を失った。
「お母さんのパートも?」
「あれは趣味で花屋を手伝ってるだけ。実際は働く必要はない」
父は続けた。
「お前が小さい頃から、金目当ての男が寄ってくることを恐れていた。だから質素に暮らし、普通の家庭を装ってきた」
「そんな…」
「でも、健太は見事に本性を現したな」
父は冷たく笑った。
「お父さん、婚約破棄する時に、本当のこと伝えてもいい?」
「もちろんだ」
数日後、私は健太に婚約破棄を伝えた。
「え?なんで?急に」
「あなたが両親を馬鹿にしたから」
「貧乏だからって?俺、気にしないって言ったじゃん」
「貧乏じゃないよ」
「え?」
私は父の名刺を差し出した。
健太は名刺を見て固まった。
「これ…嘘だろ…?○○ホールディングスの会長…?」
「本当だよ。あなたが馬鹿にした『そんな仕事』の人の年収、推定で5億円以上らしいけど」
健太の顔が真っ青になった。
「ま、待って。誤解だよ。俺、お義父さんのこと—」
「金目当ての男を避けるために、父は身分を隠してた。あなたは見事に本性を現したわね」
「違う!俺は本気で—」
「本気で私の両親を『貧乏』って馬鹿にしたよね。その言葉、一生忘れない」
健太は必死に謝ったが、私の気持ちは変わらなかった。
その夜、健太の母親から電話があった。
「ちょっと、お父様が会長だなんて聞いてないわよ!」
「だって聞かれなかったので」
「息子が失礼なことを言ったのは謝るわ。だから婚約破棄は—」
「無理です。お義母さんも顔合わせの時、『うちとは会社の規模が違う』って言いましたよね」
義母は黙った。
「今更、父が会長だと知って態度を変えるんですね」
私は電話を切った。
翌週、衝撃的なことが起きた。
【続きは次のページで】



コメント