私は洗い物を続けた。
もう反論する気力もない。
夕飯を食べ終えた健太は、私のスマホを見た。
「またインスタ見てんの?」
「うん、ちょっと」
「料理の写真ばっかり撮って、何が楽しいの?」
「…楽しいよ」
「フォロワー増えた?」
「うん、まあまあ」
「どうせ数百人でしょ。そんなの意味ないって」
私は何も言わなかった。
実際のフォロワー数は30万人。
でももう健太には言わない。
言っても信じないし、笑われるだけだから。
4年前、私はインスタを始めた。
きっかけは些細なことだった。
毎日作る料理が、ただ消えていくのが寂しくて。
「せめて写真に残そう」
そう思っただけ。
最初はフォロワー30人くらいだった。
いいねも家族や友人からの数個だけ。
でも不思議と続けられた。
子供の離乳食を作る時、一緒に写真も撮った。
時短レシピを工夫した時、投稿した。
コメントが少しずつ増えてきた。
「参考になります!」
「うちの子も食べてくれました」
そんなコメントが嬉しかった。
半年後、フォロワーが1000人を超えた。
健太に報告した。
「ねえ、インスタのフォロワー、1000人超えたよ」
「へー、で?」
健太はテレビを見たまま答えた。
それでも私は続けた。
1年後、フォロワーは5000人。
ある日、企業からDMが来た。
「商品をPRしていただけませんか?報酬は5000円です」
初めての案件。
手が震えた。
「健太、企業から依頼が来たの!5000円もらえるって」
「5000円?そんなのバイトした方が稼げるじゃん」
健太は笑った。
「意味ないと思うけどな。そんな暇あったら掃除でもすれば?」
【続きは次のページで】


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