「お前…30万人って…本当なのか?」
「本当」
「いつから?」
「4年前から。あなたに最初に報告した時、『意味ない』って言われたでしょ」
健太は黙った。
「収入は?」
「月100万」
「月…100万…?」
健太は絶句した。
「年収1300万。あなたの倍よ」
「なんで教えてくれなかったんだ」
私は冷静に答えた。
「教えたわ。何度も。でもあなたは毎回笑って、『意味ない』『バイトした方がマシ』って言った」
「それは…」
「もういいの。離婚するから」
「え?」
「あなたは私の努力を一度も認めてくれなかった」
「待ってくれ」
「『子供の面倒見てるだけ』って何度言われたと思う?」
健太は何も言えなかった。
「私、育児しながらあなたの倍稼いでたの。誰が大変だったと思う?」
翌日から、変化が起きた。
保護者のLINEグループが盛り上がっていた。
「昨日の授業参観、すごかったですね」
「○○さん(私)、あんなに有名だったなんて」
「息子さんの作文、感動しました」
このグループに、健太の同僚の妻・田中さんもいた。
田中さん「え、あの料理アカウント、健太さんの奥様だったんですか!?私も毎日見てます!」
他の保護者「そうなんです!30万人だそうです」
田中さんはすぐに夫に連絡した。
田中さんの夫は健太の直属の上司だった。
「課長、健太さんの奥さん、すごい人らしいですよ」
「え?」
「インスタで30万人のフォロワーがいて、料理の本も出してるって」
「マジで?」
次の日、会社で噂が広まった。
「健太の嫁、インスタで有名らしいぞ」
「30万人って、芸能人レベルじゃん」
上司が健太を呼んだ。
「健太、お前の奥さん、料理のインフルエンサーなんだって?」
「あ…はい…」
「うちの新商品、PRしてもらえないか?頼んでくれよ」
健太は答えに詰まった。
「実は…離婚することになりまして…」
「は?なんで?」
「色々ありまして…」
上司は呆れた顔をした。
「お前…そんないい奥さん、手放すのか?」
健太は何も言えなかった。
その夜、私は自分のアカウントに投稿した。
顔は出さず、文章だけ。
「私には5歳と2歳の子供がいます。
4年前、育児の合間にインスタを始めました。
フォロワー30人からのスタートでした。
毎日コツコツ投稿を続けました。
夫には『意味ない』『暇人』と言われました。
でも諦めませんでした。
今、30万人の方に見ていただけるようになりました。
育児をしながら、夫の倍の収入を得られるようになりました。
先日、息子が学校で私のことを『すごい人』と作文で発表してくれました。
夫は初めて私の活動を知りました。
でも遅すぎました。
4年間、私の努力を笑い続けた人とは、もう一緒にいられません。
これから子供たちと新しい人生を歩みます」
この投稿は大きな反響を呼んだ。
いいね15万、コメント5万件。
「泣きました」
「あなたは素晴らしいママです」
「応援してます」
健太の会社の人もこの投稿を見た。
「これ、健太の嫁の話じゃないか?」
健太は社内で気まずい立場になった。
1ヶ月後、離婚が成立した。
親権は私。
健太は養育費を月15万円払うことになった。
私は子供たちと新しいアパートに引っ越した。
インスタの活動は続けた。
フォロワーはさらに増えて50万人になった。
企業からのオファーも増えた。
ある日、出版社から連絡があった。
「新しい本を出しませんか?タイトルは『ママだって頑張ってる』で」
私は承諾した。
本は発売と同時にベストセラーになった。
テレビの取材も来た。
「シングルマザーとして、どうやって両立してるんですか?」
「毎日コツコツです。子供が寝た後、2時間だけ仕事をします」
放送後、さらに多くの人が応援してくれた。
半年後、健太から久しぶりに連絡が来た。
「お前、テレビ出てたな」
「うん」
「すごいな…」
「もう関係ないでしょ」
「…ごめん。もっと応援すればよかった」
私は返信しなかった。
今、私は幸せだ。
子供たちは私を誇りに思ってくれている。
毎日、たくさんの人から「ありがとう」のメッセージが届く。
夫に認められなくても、私は前に進める。
自分の価値は、自分で決めるものだから。


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