「金なら払う!いくらでも払うから!」
「お金の問題じゃないの」
私は、立ち上がった。
「あなたのお義母さんには、ちゃんとした介護サービスがある」
「ケアマネージャーに相談して、プロに頼みなさい」
「お、俺じゃダメなのか?」
「誰でもできるんでしょ?」
私は、そう言い残して、その場を去った。
それから数ヶ月後。
同僚から聞いた。
健二の母親は、結局施設に入所したらしい。
健二は、介護ストレスで会社を休職。
美咲との離婚も秒読みだという。
私は、何も感じなかった。
同情も、後悔も、何もない。
ただ、一つだけわかったことがある。
介護は、「誰でもできる仕事」じゃない。
体力、忍耐、そして何より、愛情が必要な仕事だ。
それを理解できない人に、介護はできない。
今日も、私は施設で働いている。
利用者の田中さんが、笑顔で言った。
「あなたがいてくれて、本当に助かるわ」
「ありがとうございます」
私は、微笑んだ。
この仕事を、誇りに思っている。
誰に何を言われても、この気持ちは変わらない。
窓の外を見ると、春の日差しが差し込んでいた。
新しい季節が、また始まる。
【完】



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