その人は、私の元夫・健太だったのです。
「え…健太?なんで…お母さんと?」
私の声は震えていました。
健太は私を見て、嫌そうな顔をしました。 「あー、バレちゃったか。まあいいや、もう隠す必要もないしな」
「隠すって何よ!お母さん、説明して!」
母は狼狽えながら言いました。 「あのね、これは違うのよ。健太さんは私の相談に乗ってくれてただけで…」
「相談?」私は声を荒げました。「ホテルで相談?」
健太がため息をついて言いました。 「美代さん、もういいよ。俺たちは愛し合ってるんだから、堂々としよう」
私は頭が真っ白になりました。 「愛し合ってるって…健太、あなた正気?お母さんは私の母親よ?」
「だから何だよ」健太は冷たく言いました。「お前とはもう離婚したんだから関係ないだろ」
「関係ないですって?私の母親に手を出しておいて!」
すると母が口を挟みました。 「あなたには関係ないでしょ。私だって女よ。幸せになる権利があるわ」
「お母さん…」私は信じられませんでした。「娘の元夫と付き合うなんて、普通じゃないよ」
母が急に真剣な顔になりました。 「お願い、お父さんには絶対に言わないで。あの人を傷つけたくないの」 「でも…」 「お願いよ。私が悪いのは分かってる。でもお父さんには…」
私も父のことを考えると胸が痛みました。優しい父がこの事実を知ったらどれほど傷つくでしょうか。
健太がニヤリと笑いました。 「美代さんは俺の良さを理解してくれるんだ。お前と違ってな」
私は怒りで体が震えました。 「健太、あなたお母さんを利用してるだけでしょ?」
「利用?」健太は眉をひそめました。「俺が美代さんを本気で愛してるのに、そんなこと言うなよ」
母が健太の腕に寄り添いながら言いました。 「そうよ。健太さんは私のことを本当に愛してくれるの。あなたみたいに健太さんを理解できない人には分からないでしょうけど」
私は必死に説得を続けました。 「お母さん、冷静になって。健太はお金目当てかもしれないよ」
「お金?」健太が怒ったように言いました。「俺がそんな男に見えるのか?ひどいな」
「見えるに決まってるじゃない!結婚してた時もお金にがめつかったし!」
母が健太をかばいました。 「あなたは健太さんに捨てられたから、嫉妬してるのよ。みっともない」
それから毎日のように、私は母を説得しようとしました。
「お母さん、健太の本性を知ってるのは私だけよ。絶対に騙されてる」 「健太さんはそんな人じゃない。あなたは偏見を持ちすぎ」 「偏見じゃないの!事実よ!」 「もう聞きたくない。健太さんに全部話すから」
そして恐れていたことが起こりました。
健太から電話がかかってきたのです。 「おい、美代さんに変なこと吹き込むのやめろよ」 「変なことって何よ」 「俺が金目当てだとか。失礼だろ」 「事実でしょ?」 「俺は美代さんを心から愛してるんだ。邪魔しないでくれ」 「愛してる?嘘つかないで」 「嘘じゃない。美代さんは俺にとって特別な人なんだ。お前には理解できないだろうけど」
数日後、母から相談されました。 「健太さんがFX投資を教えてくれるって言うの。とても儲かるらしいのよ」
私の血の気が引きました。 「お母さん、それだけは絶対にダメ!」 「なんで?健太さんは私のためを思ってくれてるのよ」 「騙されてるのよ!お金を渡したら絶対に戻ってこない!」 「あなたは健太さんを悪く言いすぎ。信頼できる人よ」
私がどんなに止めても、母の決意は固かったのです。
「退職金の2000万円を預けることにしたの」
私は慌てて健太に電話しました。 「健太!お母さんからお金を取るのはやめて!」 「取る?人聞きの悪いこと言うなよ。投資で増やしてあげるんだ」 「嘘でしょ?お母さんを騙してお金を取ろうとしてるんでしょ?」 「俺を信用できないのか?美代さんのために頑張ってるのに」 「信用できるわけないじゃない!」 「ひどいな。美代さんがかわいそうだ」
そしてその1週間後、母から泣き声の電話がかかってきました。
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