「健太さんが…健太さんが消えちゃったの」 「え?」 「お金も…2000万円も全部なくなっちゃった」 「お母さん…」 「あなたの言う通りだった。私が馬鹿だった。ごめんなさい…」 「お父さんに…お父さんに謝らなきゃ。もう隠せない」 「お父さんに?」 「全部話すわ。こんな大金を失って、隠し通せるわけがない」
私は急いで母のもとへ向かいました。母は憔悴しきって、別人のようになっていました。私も複雑な気持ちでした。父にバレるのは時間の問題だったのです。
「お母さん、大丈夫。健太を必ず見つけ出して、お金を取り返すから」 「でも…もう手遅れよ」 「諦めないで。あんな男を野放しにはできない」
私は探偵事務所に依頼し、1ヶ月後に報告を受けました。
「健太さんは25歳のキャバ嬢と逃げる予定でしたが、その女性に騙されてお金を全部取られたようです。今は借金まみれで国内に隠れています」
探偵さんが教えてくれた住所に向かうと、やつれ果てた健太がいました。
「あら、健太。随分とみすぼらしくなったのね」 「な、なんで俺の居場所が…」 「お母さんのお金を返してもらうわよ」 「金?もうないよ。全部取られた」 「それはあなたの問題。2000万円、きっちり返してもらうから」 「無理だよ!そんな金どこにもない!」 「じゃあ警察に行きましょうか。詐欺罪で」
弁護士と一緒に健太の財産を差し押さえ、詐欺で告訴しました。
実はまだ別の口座にお金を隠し持っていて、最終的に母の2000万円は満額回収することができたのです。
そして父に全てを話した時のことは今でも忘れられません。
「実は…薄々気づいていたんだ」父は静かに言いました。
「お父さん…」
「美代の様子がおかしいのは分かっていた。でも問い詰める勇気がなくて」
「ごめんなさい…」母が泣きながら謝りました。
「あなたがいてくれて本当によかった」母が涙を流しながら言いました。 「家族だもん。お母さんを騙すような男は絶対に許さない」
健太は刑務所で反省の日々。母も元気を取り戻し、父との関係も修復できました。悪い男に騙される人が減ることを心から願っています。
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