「あのね、聞いたわよ。あなた、うちの甥っ子を奴隷扱いしてるんですって?」
「え?何のことですか?」
「家事を全部押し付けて、自分は何もしてないって聞いたわよ。ありえないわ」
私は混乱した。
「そんなこと言ってません。家事は分担してるだけです」
「嘘おっしゃい。お義母さんから聞いたのよ。『嫁が息子を奴隷みたいに扱って、自分は何もしない』って」
は?
私は義母が何を言っているのか理解した。義母が、親戚中に嘘を吹聴してる。
その後も、親戚から次々と電話がかかってきた。
「息子さんに全部家事やらせて、あなたは何してるの?」
「嫁失格よ。恥ずかしくないの?」
「旦那さんが可哀想」
私は何度も「家事は分担してます」と説明したが、誰も信じてくれなかった。
みんな義母の言葉を信じている。
私は夫に泣きながら相談した。
「お義母さんが親戚中に嘘を広めてる。私が全部家事を押し付けてるって」
夫は最初信じられない顔をしたが、私が親戚からの電話の内容を説明すると、顔が険しくなった。
「母さん、何やってるんだ…」
夫はすぐに義母に電話した。
「母さん、親戚に何て言ったの?」
義母は電話越しに「息子のことを心配して、事実を言っただけよ」と開き直った。
「事実?俺が奴隷扱いされてるって、誰が言った?」
「だってあなた、家事やってるんでしょ?男がそんなことするなんて恥ずかしいわ」
「恥ずかしい?俺と妻は共働きで、家事を分担してるだけだ。それの何が悪い?」
「男が家事なんて!あなた、嫁に洗脳されてるのよ!」
夫は呆れていた。
「母さん、嘘を広めるのはやめて。妻が親戚から責められて困ってる」
「嘘じゃないわ。息子を守るために言ってるの」
義母は聞く耳を持たなかった。
夫は決意した。
「わかった。親戚を集めて、ちゃんと説明する」
翌週末、夫が親戚を義実家に集めた。義母は「何のつもり?」と不機嫌だった。
親戚が10人ほど集まった。みんな私を見る目が冷たい。
夫が口を開いた。
「今日集まってもらったのは、母さんが広めた情報が全部嘘だからです」
義母が「何を言ってるの」と割り込もうとしたが、夫は続けた。
「俺は奴隷扱いなんてされてない。妻と俺は共働きで、家事を分担してる。それだけです」
夫はスマホを取り出して、画面を見せた。
「これが俺たちの家事分担表です」
そこには、私たちが作った詳細な家事分担表があった。
月曜日:夫が洗濯、私が料理 火曜日:私が洗濯、夫が料理 水曜日:夫が掃除、私が料理 木曜日:私が掃除、夫が料理 金曜日:外食 土曜日:一緒に買い物と掃除 日曜日:一緒に料理
完全に分担されている。
「見てわかる通り、ちゃんと分担してます。俺が全部やってるわけじゃない」
親戚たちが顔を見合わせる。
夫はさらに続けた。
「俺は自分で洗濯も料理もできる。妻に感謝してるし、お互い助け合ってる。これの何が問題なんですか?」
叔母が義母を見た。
「お義母さん、これ…全然違うじゃない」
義母の顔が真っ赤になった。
「でも、男が家事なんて…」
「それは時代遅れの考えです」
夫がきっぱり言った。
「俺たち夫婦は共働き。家事も育児も、これから全部分担するつもりです。母さんの時代とは違うんです」
親戚の一人が義母に言った。
「お義母さん、なんで嘘ついたの?」
「嘘じゃないわ。息子が家事をさせられてるのは事実でしょう」
「『させられてる』じゃなくて、『分担してる』んでしょ。全然違うわよ」
別の親戚も言った。
「私たち、お嫁さんに酷いこと言っちゃったわ。お義母さんの話を鵜呑みにして」
親戚たちが、次々と私に謝ってきた。
「ごめんなさい、誤解してたわ」
「お義母さんの話だけ聞いて、決めつけて悪かった」
私は涙が出そうになった。やっと、わかってもらえた。
義母は孤立していた。
「私は…息子のためを思って…」
夫が冷たく言った。
「嘘で妻を傷つけて、それが息子のため?」
「だって…」
「もういい。母さん、しばらく距離を置かせてもらう」
義母の顔が青ざめた。
「そんな…息子…」
「嘘を広めて妻を傷つけた責任、取ってもらう。今日からしばらく、実家には来ない。連絡もしない」
義母は何か言おうとしたが、夫はもう聞いていなかった。
私たちは義実家を出た。
車の中で、夫が言った。
「ごめん、母さんのせいで辛い思いさせて」
「ううん、あなたが守ってくれたから」
「これからは、母さんと距離を置く。俺たちの生活に口出しさせない」
私は夫の手を握った。
それから半年、義母とは連絡を取っていない。
義母から何度も「ごめんなさい」とLINEが来たが、夫は「反省が見えない」と返信していない。
親戚からは、私たちの味方が増えた。
「共働きなら家事分担は当然よね」
「お義母さん、時代についていけてないのよ」
最近、義父から連絡があった。
「母さんが反省してる。会ってやってくれないか」
夫は「母さんが嘘を広めたことを親戚全員の前で謝罪するなら考える」と答えた。
義母は「そこまでしなくても」と渋っているらしい。
なら、まだ会う必要はない。
私たち夫婦は、今日も仲良く家事を分担している。
夫が洗濯物を干しながら「俺、家事得意かも」と笑う。
私が料理を作りながら「ありがとう」と答える。
これが私たちの普通。
義母の「男は家事をするな」という価値観は、もう通用しない。
因果応報。
嘘を広めた義母は、息子からも親戚からも信用を失った。
私たちは、自分たちのスタイルで幸せに暮らしている。
それだけだ。


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