「美咲、どういうつもりだ」
和也が、怒った顔で言った。
「離婚するわ」
「は?なんで?」
「お義母さんの暴言に耐えられないから」
「母さん、そんなに酷いこと言ってないだろ」
私は、録音を再生した。
『女の子なら産み直して』
『女の子なんて、いらないわ』
『養子に出すわ』
義母の声が、部屋に響いた。
調停委員が、義母を見た。
「これは…本当にあなたの発言ですか?」
静江が、顔を真っ赤にした。
「そ、それは…そういう意味じゃなくて…」
「どういう意味ですか?」
私が、冷静に聞いた。
静江は、何も言えなかった。
調停委員が、和也を見た。
「あなたは、奥様と娘さんを守らなかったんですね」
「いや、それは…」
「録音では、あなたも『跡継ぎは男の子の方がいい』と発言していますが」
和也が、黙り込んだ。
調停委員が、判断を下した。
「離婚を認めます」
「慰謝料は300万円」
「親権は、母親の美咲さんに」
静江と和也が、顔を青ざめさせた。
「300万…?」
「精神的DVの慰謝料としては、妥当です」
私は、ホッとした。
やっと、この家から解放される。
それから3年が経った。
私は、娘と二人で幸せに暮らしていた。
実家の助けを借りながら、仕事も育児も頑張った。
娘は、すくすくと育っていた。
「ママ、大好き!」
娘が、笑顔で抱きついてくる。
この子を産んで、本当によかった。
ある日、スーパーで買い物をしていると、見覚えのある人物を見かけた。
和也だった。
やつれた顔。疲れ切った様子。
「あ…美咲…」
和也が、私に気づいた。
「久しぶり」
私は、冷静に答えた。
「娘、元気か?」
「ええ、とても元気よ」
和也が、寂しそうに笑った。
「そっか…よかった…」
「それで、あなたは?」
「俺は…」
和也が、言葉を詰まらせた。
「母さんが、また『跡取りを作れ』ってうるさくて」
「でも、再婚相手も見つからないし…」
「母さんも、最近体調崩して…」
和也は、完全に疲弊していた。
「あの時、お前と娘を守れば良かった」
「今更、後悔してる」
私は、何も言わなかった。
「なあ、もう一度…」
「無理よ」
私は、きっぱりと言った。
「あなたは、私たちを守らなかった」
「娘を『女の子だから必要ない』って言った」
「それは、絶対に許せないの」
和也が、俯いた。
「そうだよな…」
私は、娘の手を引いて去った。
振り返ると、和也が小さくなっていた。
家に帰ると、娘が言った。
「ママ、今日楽しかったね!」
「うん、楽しかったね」
私は、娘を抱きしめた。
この子は、私の宝物。
男の子でも女の子でも、関係ない。
大切な、私の娘。
後日、母から聞いた。
和也の家は、跡取り問題で揉めているらしい。
静江は、病気で入院。
和也は、介護と仕事で疲弊している。
因果応報。
人を傷つけた者には、必ず報いが来る。
窓の外を見ると、娘が公園で遊んでいた。
笑顔で走り回る姿。
これ以上の幸せはない。
私は、この子と一緒に、新しい人生を歩んでいく。
【完】



コメント