「見捨てるんじゃない。けじめをつけてほしいだけだ」
義母は何も言えなくなった。
しばらくして、絞り出すように言った。
「…わかったわよ。返す。でも時間をちょうだい」
「いつまでに返せますか」
私が聞くと、義母はさらに顔を青ざめさせた。
「…3年」
「では誠、書面を作りましょう」
誠が頷いた。
その日、返済計画書にサインさせた。
弁護士に依頼して、公正証書にもした。
義母が帰っていく後ろ姿を見ながら、誠が言った。
「さとみ、ごめんな。気づいてやれなくて」
「もういいよ。これからは私たちの家庭を一番に考えてくれれば」
「ああ、絶対そうする」
それから半年が経った。
義母からは毎月、決まった日に返済が振り込まれてくる。
訪問はない。
連絡もほとんどない。
家の中が、驚くほど静かで穏やかになった。
先日、スーパーで義母を見かけた。
特売コーナーで、安い茶葉を手に取っていた。
私はそっとその場を離れた。
「安いお茶はダメよ」と言っていた人が、自分では安い茶葉しか買えない。
因果応報という言葉が、頭に浮かんだ。
私はそのままレジに向かい、いつも通りの買い物を済ませた。
晴れやかな気持ちで。


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