義母の友人、田中さんから連絡が来たのは、あの日から3日後だった。
「さとみさん、少しお話しできますか」
田中さんは義母の茶道仲間で、10人の中で唯一私に気を遣ってくれる人だった。
近所のカフェで向かい合うと、田中さんは申し訳なさそうに切り出した。
「あのね、言うべきかどうか迷ったんだけど…あなたのことが心配で」
「どうしたんですか?」
「○○さん(義母)、最近お金に困ってるみたいなの」
私は首を傾けた。
「お金に…困ってる?」
「そうなの。実は私にも先月、5万円貸してほしいって連絡が来て。他の仲間にも借り回ってるみたいで」
私は言葉を失った。
「それで…さとみさんのお宅に来る時だけ、高いものを要求してるって聞いて。自分じゃ買えないから、人の家で食べるんだって」
頭の中で、義母の言葉が蘇った。
「安いお茶はダメよ」
「デパートのお菓子じゃないとダメ」
「うちの息子にはいいものを食べさせなさい」
全部、自分では買えないから言っていた言葉だったのか。
「田中さん、教えてくれてありがとうございます」
私はカフェを出て、すぐに動き始めた。
家に帰って、まず過去2年分のレシートを引っ張り出した。
私は几帳面な性格で、家計の出費は全て記録していた。
義母が来るたびに買った茶葉、お菓子、お土産用の手土産。
電卓を叩いた。
「…83万円」
2年間で83万円。
誠には内緒で、義母のために使ってきたお金だった。
誠に「高いものを買いすぎ」と言われたくなくて、食費や雑費に紛れ込ませてきた。
その夜、誠が帰ってきた時、私はテーブルにレシートの束とカードの明細を並べた。
「誠、少し話がある」
「どうした?」
「先日の5万円の件なんだけど」
「ああ、さすがに使いすぎだろ。母さんが友達連れてきたからって—」
「あなたのお母さんに言われた通りにしただけよ。安いものはダメって言われたから」
誠は黙った。
「それからこれ、過去2年分のレシート。全部お義母さんのために買ったもの」
「…これ全部?」
「合計83万円。全部記録してある」
誠の顔が青ざめた。
「それから、これも見て」
【続きは次のページで】


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